前翅の長さ約十五ミリメートル、全体黄色の小型のガで、野菜や果樹の害虫として知られています。幼虫は毒毛をもち、これに触れるとかゆくなります。幼虫は4月から6月と12月ごろによく見られ、いろんな植物を食べるので、どこにでもいる、やっかいな毛虫です。成虫は夜間に活動し、灯りにもきます。
このガのメス成虫は交尾のため、性フェロモンを放出し、オスを呼びます。フェロモンというのは同種どうしのコミュニケーションに使われる化学物質で、オスは性フェロモンに反応してメスを見つけます。興味深いことに、ドクガクロタマゴバチという、ドクガの卵に寄生する微小なハチ(体長約〇.八ミリメートル)がこのフェロモンを利用しています。
卵寄生バチのメスは、性フェロモンを手がかりにして、タイワンキドクガを見つけ、ガの腹端の毛の束の中にもぐりこみます。ドクガが産卵を始めると、ハチは毛の束から出て、ガの卵に自分の卵を産みつけます。ドクガはたくさんの卵を一ヶ所にかためて(卵塊で)産むので、寄生バチは多数の卵に効率よく産卵できるわけです。ハチは、ドクガに乗り、ガの産卵場所まで運ばれます。この行動を便乗と呼んでいます。一匹のドクガに数匹、ときには十匹のハチが乗っています。ドクガは複数の卵塊を異なる場所に産みます。便乗したハチは最初の卵塊に降りるので、2番目以降の卵塊は、ハチの寄生から逃れることができます。
文・写真
沖縄県農業研究センター
小浜 継雄