濃褐色の地に黄色の斑がある中型のイトトンボの仲間で、体長は雄43㎜、雌37㎜内外である。雄腹部の第9節背面に刺状突起が見られるため、こうした名前がつけられている。また、雄の成熟した個体は、その前翅先端部に明瞭な黒褐色の斑紋がみら
れるこの斑紋は沖縄島北部に生息する別種のヤンバルトゲオトンボとの大きな区別点でもある。
オキナワトゲオトンボは沖縄島と渡嘉敷島の固有種で、現在絶滅のおそれの高いことから、沖縄県版レッドデータブックでは、「準絶滅危惧種」として選定されている貴重種である。 主に山間の渓流域に生息し、樹林におおわれた小さな沢すじで多く見られる。成虫は3月から7月下旬頃に発生する。飛び方は緩やかで行動する範囲もせまく、釈すじにある湿った岩盤に生えるシダ類にとまっていることが多い。
最近、山地の開発などで生息環境が荒廃し分布域が狭まっているとされるが、村内では親志近くの長田川上流部で生息している。ここは沖縄市北部の嶽山原(たけやんばる)とともに沖縄島での生息地の南限地にあたる。この長田川上流部には、うっそうとしたイタジイ林が見られ、まさに国頭地域と同じ森林景観が広がり、こうした貴重種等が飛び地のように生息している場所である。したがって、こうした貴重な生息地が失われないように大切に保全していくことが重要である。
文・写真県立美咲養護学校 嵩原建二