成虫(写真)は体長約四ミリメートル、からだ全体に短いトゲ状の毛が生えています。前々回、紹介したアリモドキゾウムシとともに、イリムサーと呼ばれるサツマイモの大害虫です。サツマイモのほかにヨウサイ(ウンチェー)やノアサガオにもつきます。幼虫に食われたイモは独特の強い臭気と苦味があり食用にできません。また、被害イモは菓子やパンの加工用としても使えません。
本種は第二次大戦後の混乱期に、マリアナあるいはハワイからサツマイモとともに沖縄島に持ち込まれたようです。最初に勝連町(現在のうるま市)で見つかり、発見から数年もたたないうちに、沖縄県全域に分布を広げました。当時、重要な食料であったサツマイモの各島への移動にともなって、短期間のうちに分布を広げたようです。日本では奄美諸島以南の南西諸島と小笠原諸島に分布します。アリモドキゾウムシと同様に、植物防疫法という法律でイモゾウムシの発生地から未発生地へのサツマイモ(ウンチェーも)の持ち出しが禁止されています。そのため、沖縄県のサツマイモ生産振興の大きな妨げになっています。
現在、久米島で不妊虫放飼法を使った、イモゾウムシの根絶事業が進められていますが、いろいろな困難(基礎的な生態がよくわかってない、飛翔能力がない、飼育虫の病気の発生のため不妊虫の大量生産ができないなど)があって、今のところ根絶の見通しはついていません。沖縄県は、根絶に向けた研究を進めており、不妊虫放飼法の技術的な問題を解決しつつあります。
文・写真沖縄県農業研究センター 小浜継雄