読谷の民俗芸能 45舞踊(22)クヌブンギー(九年母木)
今月の本題に入る前に七月号でお話ししました字儀間の「笠踊り」について曲名が分かりましたので、ご報告致します。
字儀間の「笠踊り」はナカラタ節、瓦屋節、ションガネー節の三曲構成であったようです。芸能に関わっている方でしたら、これは女手踊りの「瓦屋節」では、と感じると思います。この「瓦屋節」は、元々は「月見踊り」とも呼んだということですので、字儀間の方が話された月見の内容であったということと一致してきます。字儀間の「笠踊り」の歌詞は「瓦屋節」と同じで、花笠を持って踊ったことが伺えます。復活に向けて期待がふくらんできました。
さて、今月は字長浜の「クヌブンギー」を味わってみましょう。クヌブンギーという節名はエイサーでもよく耳にしますが、字長浜の踊りに使用するクヌブンギーとは節回しが異なります。字長浜では「クガナー」とも呼んでいます。本来は一揚調(トーチンダミ)で弾いていたようですが、現在は本調子で演奏しています。
歌詞は次のとおりです。
①九年母木の下居てョ
スーリー 姉がむて
ふどうわーすョ クガナー
②人勝いなりよェ
スーリー 墨さぬん
すぐりゝよ クガナー
③大和旅願らばョ
スーリ 糸布ん
もうきて来うよ クガナー
④いんし布はじゆらばヨ
スーリー 姉からど
選ばする クガナー
クヌブンギーは、みかん(クニブ、キンブ)の木のことで沖縄では、シークワーサー、クガニー、カーブチー、オートーなどの種類があります。糸布は絹のことでハヤシのクガナーは幼児をさしています。子守歌の内容で、弟の健やかな成長を願う姉の心情がにじみ出ています。
踊りは小道具として両手に扇子を持ちます。
主な所作(しょさ)は
○右手・左手を交差して両手 を横に広げる
○扇子を前方でたらすように 下に向ける
○扇子を左肩・右肩に置く
○左手の扇子を立て、右手の 扇子を上からかける(右手も 同じ)
○前方で左・右交互に扇子を 出したり引いたりする
など「上り口説」や「松竹梅」の松と竹の踊りにみられる振りが目立ちます。
軽快なテンポで踊られ、二分少々の短い踊りです。昭和五十八に復活されました。
文・沖縄藝能史研究会会員 長浜 眞勇