「ゴキブリ」というと、誰もが家の中を動き回るワモンゴキブリのような不快な「害虫」を連想しますが、世界に知られる約3700種の内、家の中に入るゴキブリ類はわずかで、その大部分は主に森林にすんでいます。
この森林にすむゴキブリ類は、自然界では落葉などを分解する土壌(どじょう)動物のひとつとして、食物連鎖(しょくもつれんさ)に重要な役割を担っています。
本種もそうしたゴキブリの一種で、全世界の熱帯から亜熱帯地域の平地に広く分布し、ふつう家の中に入ることはなく(土間などに侵入することはある)、落葉や石、倒木の下に群生しており、芝生の庭でもよく見られます。雄は15ミリメートル内外、雌は17ミリメートル内外で、幅広い体型をしています。雄の前
胸部は光沢のある黒色で、その前縁は黄色の縁どりがあり、はねは茶褐色です。雑食性で、主に腐食物(ふしょくぶつ)を食べて暮らします。また、この仲間のゴキブリは、昆虫類では珍しく、メスは産んだ卵鞘(らんしょう)を体内の保育のうに保持し、幼虫がふ化して、体外に産み出されるという「卵胎生(ら
んたいせい)」の繁殖生態をもっています。本種の国内での分布は、九州の薩摩(さつま〕半島以南の南
西諸島や伊豆鳥島、小壁原諸島などに分布しています。
文一県立美咲養護学校
嵩原建二
写真一沖縄県農業研究センター
小浜継雄