読谷の民俗芸能50 歌劇(2)イサヘイヨー
歌劇「イサヘイヨー」は、昭和十五年頃、渡慶次出身の新垣喜一さんが構成したと言われ、ウダンナー、アヤーグヮーメー、サンラー、マカテーグヮーの男女四人で繰り広げる喜歌劇です。
季節は、春三月。花遊びで賑わう雰囲気の中で、物語は始まります。
まず、アヤーグヮーメーと供のマカテーグヮーが登場、マカテーグヮーは忘れ物を取りに戻ったためアヤーグヮーメーは、傘を差して一人待っている。そこへ、ウダンナとサンラーがやってくる。アヤーグヮーメーに一目惚れしたウダンナは、早速語りかける。色よい返事がないことに業を煮やしたウダンナは、「がけから飛び降りる」と思いの丈をぶちまける。アヤーグヮーメーは、それほどの思いをかけてくれるのなら、明日の十二時に尋ねてくるように告げる。その様子を陰から見ていたサンラーとマカテーグヮーは、二人のやりとりをおもしろおかしく再現する。
場面は、アヤーグワーメーの家に変わり、ウダンナが訪ねてくる。生垣の葉の音がして、ウダンナかと思い、外に出るアヤーグヮーメー。とうとう二人は再会を果たす。またまた、サンラーとマカテーグヮーの二人が、同じ会話で狂言を演じる。
一晩中語り明かしたウダンナは、名残を惜しみながら別れを告げる。「情けの証のティサジです。」、「形見だよ、この指輪。」と変わらぬ契りを交わす。三度、サンラーとマカテーグヮーのドタバタ劇。「情けの証のかんざしです。」、「形見だよ、このぞうり。」と、愛の約束を交わし、ウダンナとアヤーグヮーメーにお礼を述べる。めでたし、めでたいで四人が踊る中、幕となる。
十五分程度の短い歌劇ですが、サンラーとマカテーグヮーの片足立ちなどのコミカルな演技に観客は大喜びです。
「イサヘイヨー」は、歌のハヤシからきた節名ですが、意味は分かりません。本歌と言われる歌詞は、「津堅と久高に船橋かけて 津堅の美童 渡し欲さぬ」であり、本島東海岸一帯のアシビ歌ではないかと思われます。
明治四十年、我加古弥栄作歌劇「泊阿嘉」に取り入れられ、全島的に伝わりました。
音楽は、別に、ハイニヤター節、仲座ヒー節、デンサー節、白保節があります。
民謡として、良く耳にする場面は、「イサヘイヨー」、「デンサー節」がおなじみです。
歌劇「イサヘイヨー」は村内では渡慶次だけに伝承されています。
文・沖縄藪能史研究会会員
長浜眞勇