読谷の民俗芸能51 棒-長浜棒
今からおよそ二〇〇年前、長浜に山内ウメーという武にすぐれた人がいました。山内ウメーは首里の御殿勤めをされたといいます。「生り武士(生来武の才能を持った人のこと)」であった山内ウメーは、御殿勤めのかたわら、武術の稽古に励みました。山内ウメーの名は首里王府内にも知れ渡り、数々の武勇伝も語り継がれています。
山内ウメーは、首里赤坂の地名にちなんだ「赤坂棒」と「山内暗夜」を長浜の人々に指導しました。時代は下って明治の末頃、津堅島から津堅繁多小ウスメーと浦添から浦添カンターという二人の武術者を招いて、棒術の指導を受けました。沖縄中にその名が知れた二人の武術者が相次いで長浜を訪れたため、長浜の棒術熱は一気に高まり、いわゆる長浜棒の隆盛期を迎えました。
現在、長浜には十一組の組棒が伝承されていますが、この十一組の組棒は伝承経路からおして、五つに分類することが出来ます。
山内ウメーの流れ、津堅繁多小ウスメーの流れ、浦添カンターの流れ、伝承不明の組棒、これらの技を組み入れて編み出された「変手(ヒンティ)」という分け方ができます。
このように分類すると長浜棒の発祥年代は、伝承不明の組棒の解明がなされていない現在、山内ウメーの時代のおよそ二〇〇年前までさかのぼるものと思われます。
長浜棒の演技の構成は、二列縦隊に並んだスネーイに始まり、組棒の演技、グーヤー巻といわれる巻棒、そしてスリー太鼓でその演技を終了します。グーヤー巻とは、グーヤー(学名:高瀬貝)という貝の形をつくる集団演舞のことで、「サァ、サァ」というかけ声で左巻きに円陣を組み、その後右巻きに円陣を解いていきます。
長浜棒の技には、
①足切り……右手斜め上に振り 上げ、左から相手の足払いを する。
②大割……上段高く振り上げ、 相手の頭上に打ち込む。
③ふす技……相手のへそを突く技。
④ウービ切り……相手の腰を切る。
⑤カヂ切り……相手の肩を打ち 落とす技で、中々巧妙。
⑥突手……左手先で相手の股間 を突く。
⑦ウラ切り……上段で棒を一回 振り回して、相手を側面から 打ち込む。
等があります。
文・沖縄藝能史研究会会員 長浜 眞勇