
本土の視察研修報告書(其の三)
本土の視察研修報告書(其の三) 代表 池原昌徳 岡山県真庭郡落合町 落合町は中国地方のまん中に位し、岡山県の北端で岡山市から約七○キロの地点にあります。国鉄の便はあるども遠廻りで遅いため直行のバスに乗り山間部落の中を十数ヶ所の橋を渡りカーブの多い県道を走ること三時間、山また山の落合ったところに密集した町、落合町に着きました。 遠来の客ということもありこんな不便のところまで来てくれて、と温く迎えられ、感激された松田貢町長は熱弁をふるって町政を語られた。 かって四-五千人だった六つの小さな町と村が町村合併促進法の制定によって昭和三十年合併し、現在では一五○平方キロの広い地域に、人口二万一千人、世帯数四千四百で農業を主とする町である。土地の分布状況は総面積七○、八七五反の中、田一六、○四○反で二三%、畑七、六九五反で一一%、宅地一、六五八反で二%、山林四四、七七二反で六三%、原野七○七反で山林が最も多く耕地面積は田畑合わせて三四%である。農家の経営別耕地面積は一反歩以下の農業が七一世帯、一反歩から三反までが四二○、三反-五反が五一七、五反-七反が六三三、七反-一○反が九四九、一○反-一五反が五五七、一五反以上が二九世帯で平均にすると一世帯当り七反歩農家である、産業別の世帯構成については世帯総数四、四○○の中第一次産業である農林業が三、一七六世帯で七二%、第二次産業たる製造及び建設業が一一二、第三次産業の商業、金融、サービス公務業等が一、一二○世帯となっている。農作物のほうは水稲、麦、大豆、馬鈴薯、甘藷等が主なるものであるが大根、玉葱、白菜、なす、こんにゃく、ビート等のそ菜栽培も盛んである。畜産状況については肉牛が二、三六四頭、乳牛六五五、馬四八、豚六八二頭にして農家の割合いからすれば少ないほうでありその増殖を図る考えあるが特に酪農は有望だから稲作と乳牛の複合経営をすすめたい。近代急激に増えた機械化農業によって余ってきた労力を酪農にふりむける、そうすることによって廐肥の生産が上るので肥料代が節約できるし地力が増進される。山林を開墾して牧草をつくり水田の裏作として飼料作物をつくれば耕地面積も増えるし水稲の増収を期して合理的な農家を育成したい。次に本町には七つの単位農協があって直接農家と結びついている。町長は政策面をもっているだけで指導及び実施面はすべて農協が担当し、町と緊密な連絡をとりながら堅実な運営に当っている。 例えば稲作の場合でも育苗から田植、除草、薬剤散布、収穫に至るまで、其の他の農産物も、果樹も酪農経営もという調子で、更に肥料も農機具も共同購入で農民に関するものならその殆んどが農協を通じて行われる程農協の価値は高くそして信用も厚い、また農協のほうでも「農協のために農民がある」のでなく、「農民のために農協はある」のスローガンのもとに営農指導をはじめ指導、督励、集荷、販売に当っている。と松田町長の話しは、そこで結ばれた。 町長のお話しが終わった後、助役、牧太郎氏の案内で同町内に酪農を経営する上市瀬氏と枡谷善平氏を訪問し、乳牛の飼育管理状況を見学させていただきました。 両家とも稲作と乳牛の複合経営をした農家でそれぞれ乳牛四頭づつ(全部搾乳牛)飼育しておりますが品種は北海道産の純系ホルスタインで四才と三才のものですが一頭一日当りの搾乳量は二七リットル(一五升)程度で管理の良否によって増減するとのことでした。飼料は夏季と各季に別れ夏季はトーモロコシ、シユウダングラス、テオシン等の牧草を、冬季はイタリヤングラス、カブ、レトプを用い、それに北略一号、大豆かす等の購入飼料を混ぜて飼育している。畜舎は普通のもので省きますが乳牛の値段は純系ホルスタイン種の成牛が二十五万円(約七○○ドル)、仔牛は牝一○万円(約三○○ドル)牡六万円(一七○ドル)であり、年一回の分娩があるし牛乳売上収入として四頭で月平均四万円(約一一○ドル)の所得を挙げている、と語る御主人は嬉しそうでした。 才出において教育費に七万六千六百六拾弗の経費があることは注目される点である。これは本土の場合地方地治の中に教育行政が含まれているからであり、才入予算の国庫支出金は主として教育費の財源に充てられているようである。議会費、役所費、消防費、選挙費、統計調査費等、消費的経費の率が高いのは主として人件費が高いためであり、土木費と社会及び労働施設費の如き建設的事業費については、読谷村が高く産業経済費と財産費の如き生産振興的経費はやはり本土の率が高いのである。以上綜合して検討したとき本土の市町村は戦災が少なかったため、その経費が減り従って生産的事業の費用、住民福祉を増進する費用、社会保障制度的費用サービス行政を営む事務的費用等に比重がかけられており地方自治の本旨に基き自主的に健全な発達のもとに行政運営に邁進していること、実は羨ましい限りであります。 農機具の普及状況 耕うん機 82台 発動機 907台 電動機 245台 脱穀機 1,090台 動力噴霧機 12台 ※「読谷村と本土6ヶ町村と比較した予算構成表(才入)(才出)」は表のため、原本参照。 左の表は本土六ヶ町村の予算を各款別にまとめ、平均額にして我が読谷村と比較したものである従って表でおわかりのように、本土町村には(一)国庫支出金がある、ということ。(二)地方交付税が高卒であること。(三)県支出金が高卒であること。(四)公債で公営企業をやったり財産造成事業をやっているということ。(五)税の負担額が多いということ。(六)本村の倍以上の予算総額をもっているということ。以上何れも羨ましい限りであります。尚税負担額は、本村の場合教育税の壱万六千弗を含みますと約弐万八千弗になりますのでこのほうで比較しますと本土は表記の通り六弗参拾八仙、本村の負担額は一人当り壱弗四拾仙になります。何れにしろ本土の国民所得が高いかがわかることと思います。