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1958年3月発行 読谷村だより / 3頁

社会福祉事業研修通信(第二号)読谷村社協副会長読谷村助役知花成昇

〔21号1・2ページの続き〕

ともに、その対象の性格究明とその科学的処遇への趣向がみられるようになつた。第二次大戦後にいたり、新憲法の理念は、国家責任の原理と請求権の観念を確定し、大量の社会福祉事業の対象の現出は、社会福祉事業の機能にたいする社会経済的要求となり、ここに公私社会副事業の確定がつよく要請され、従来の社会事業の恣意性を徹底的に変革して社会福祉事業行政の専門技術化をもたらし、これらの新しい理念と方法とは、わが国社会福祉事業近代化のもとをなし、個人人格の尊重を確保するため、社会福祉事業を民主化し近代化する社会福祉事業法として結実するにいたつた。
 以上は社会福祉事業の発展の概要でありますが社会事業に関する法制の問題、民生委員制度の発展などについても御知らせ致したいと思いましたがずいぶん長くなりましたのでまた後日にゆづります。専門的でむつかしい講義でありますが講師がみんな有名な権威者ばかりで参考書も豊富ですから面白く勉強して居ります。では皆さんの御健康御発展をお祈り致しまして筆をとめる事にいたします。
さようなら
一九五八年一月二十九日

(第三号)
 本日(一月三十一日)で研修第一期を終ります。前号でお知らせ致しましたとおり研修期間を四期に分けて二週間を一期として講義がもたれております。いままでに報告いたしました事項は、社会事業基礎知識の歴史と形態についての概要でありました。今日は「社会事業の理念」についての、ノートから御知らせ致します。講師の御芳名については前号で御知らせ致しましたから重複を避けましょう。
 社会事業の根本理念はなんといっても日本国憲法第二十五条「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国はすべての生活部面において社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないということで、国家責任において、無差別平等に公私完全分離といふ社会事業の三原則の理念に立って行はねばならないとの事であります。社会事業は人間の行動が思想に基く実践であって(考え方、思想的は特徴、意志に基く行動)素質的、環境的の中から来た混然一体の人格によって人間の考え方にも大きい変化が生じてくるものであるから、たとえば「ツマミ喰い」といふ人間の行動を考えてみると、素質的、動物的本能的の行動が主体であってこれが理想的な反省によって内容的価値を減退し抑制されるのである。また靖国神社や浅草観音で白衣の人達に十円を投ずる行為或は投じない行為もそこに人間行動が思想の実践によって起るからである、と説明されております。社会的事業の発展がより多く本能的で気分的な施輿(ほどこし)から断片的な慈善となり対象がはっきり継続される慈善事業に更に社会事業にまで発展して来た事は前途したとおりである。
 次は社会事業の主要なる対象とされるものに貧困疾病、非行-Destitution,Disease,Deiinguency いはゆる三つのDがあげられるようです。即ち経済的欠陥としての貧困、健康上の欠陥である疾病、道徳的の非行等が交錯悪循還となって我等の生活の中に入りこんで正常な生活を調整コントロール出来なくなり、生活が破壊するおそれ或は破かいしたときに、社会事業の対象になる。ということです。
 英国の社会保障制度の基礎をなしたウイリアム、ピパリッチの報告書によりますと「社会保障は社会の進歩を阻害する五つの巨人Five Giantsたる窮乏、疾病、無知、不潔、怠惰を排除することを目的とし国家は国民と共にこの事業に対して責任を負うべきものである。」と書かれております。
 社会事業の定義については、前号で申上げたわけでありますが、更に分り易く講義をうけましたので、重ねて御知らせ致します。
 先づ社会事業の対象でありますが、正常な一般生活水準から脱落、背離、又はそのおそれがある不特定の個人または家族がその対象になるようです。主体は国家、地方公共団体または私人であって、社会事業の目的は正常な一般生活水準より脱落背離したものを、正常な一般生活水準に回復させること及そのおそれのあるものを保全することを以て目的とする。
 その方法は個別的に、集団的に或は地域社会的に行はれる、形態は社会的な組織的活動であり、国の一般的対策に並行して或はそれに代ってまたはそれの補いとしての機能を有することになっているようです。社会事業の分類についてはいろいろあるようですが、社会福祉事業法では、社会事業を分類して第一種および第二種と分類されています。第一種は、その経営が個人の人格に重大な影響をおよぼし、その他搾取不正等、著しい弊害を伴ない易いことなどを考慮して区別されているようですが、おのおのについてここに列記するとずいぶんと長くなりますので省略いたしまして、その外に一般的に分類されている事業別による分類を列記致します。
 上に述べてきました事は「社会と子供」という本に詳しく分り易く書かれているそうですから帰郷の際に求め参ります。社会事業の事業別による分類は次の如く八つに分類されさらにそれぞれ細分されています。
(一) 連絡調整事業(かっこ内はその例示)
1 連絡統制(各種社会事業協会、社会福祉協議会)
2 調査研究(社会事業研究所)
3 助成(共同募金委員会、各種助成財団)
4 養成(社会事業大学社会事業研修所、保母養成所、講習会)
5 委員制度(民生委員、児童委員)

(二) 生活保護事業
1 生活困窮者保護
2 行路病人および行路死亡人保護
3 引揚者保護
4 復員者保護
5 養老事業(救貧的から老人福祉という考え方に変った敬老事業として一大転換期に来ている)
6 肢体不自由者保護
7 盲人保護
8 聾唖者保護
9 罹災者保護

(三) 経済保護事業
(1)住宅供給(社会事業の領域から住宅政策的に変ってくる)
(2)宿泊施設
(3)授産事業(鉄道弘済会等が経営している授産所)
(4)職業補導
(5)公益質屋
(次号へ続く)

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