読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1959年6月発行 読谷村だより / 2頁

一九六〇年度施政方針

〔36号1ページの続き〕

負担額の軽減と事務の簡素化を企てているのであります。
 納税者の理解を深め税務行政に対する信頼を得るように一段と納税思想の昴揚と徴税の民主化を図るとともに、税源の補促の徹底、滞納整理を強化し、適正な税法の執行を期す所存であります。
 また軍用土地賃貸料や非細分地料の多額な支払が予想されますが徒らに才出の規模を膨張させることなく積立金制度の活用により、後年度に備えて年度間の財源調整の措置を実施する考えであります。
三、育英事業の発展促進
 本村が「私費大学生への学資貸与条例」を設定し、育英事業を開始してから既に五ヵ年、その間に貸与延人員九一名、貸与実人員三八名、貸与総額八、一○三弗三三仙に達し、卒業して政府、学校、金融機関等に就職した者十七名となり、貸与金の償還も開始されて順調に運営されて居りますが、二、三年来から育英会を設立して現在行われている村予算よりの貸与制度から独立発展させることが望ましいという世論に基きまして、さきに設定された育英会条例に基いて去る四月三十日読谷村育英会の創立をみましたので発足以来本年六月までに貸与した八、一○二弗五○仙から本年六月までに償還された二八八弗五七仙を差引いた貸与残七、八一三弗九三仙は読谷村育英会条例第二条の基金補助として譲渡し更に本年度における事業基金として四、○○○弗を補助して育英事業の健全な発展を促進すべく計画いたして居ります。
四、失業対策事業の強化
 本村では一九五九年度から労働の機会を失い、所得の中断した労働者に対して失業時における生活の安定を図るために、琉球政府の予算による緊急失業対策事業を実施して居りますが、一九六○年度は更にこれを強化して、多数の失業者を吸収し、緊急救済、労働力の保全による生活の安定を図るとともに、事業自体の経済効果をも考慮して予算を計上して事業個所も選定して本村経済振興に寄与せしむる計画であります。
五、住民の健康と福祉をたかめる組織の育成と活動促進
 生活保護法、児童福祉法身体障害者福祉法のいわゆる福祉三法による公的扶助が行われているとはいえ政府財源はこれを充分に保障するまでにいたっていない。わたくしたちの地域社会は数多くのニードを包含して社会の三悪といわれる貧困、疾病、非行に悩む困窮者が数多くいることは事実であります。住民の福祉に欠ける状態を究明し、これを解決するには、住民福祉に関係のある各種機関、団体即ち公民館、農協、警察、青年会、婦人会、遺族会、傷イ軍人会、子供を守る会、防犯協会、社協等の組織活動を尊重しつつこれらの諸団体を健全に育成し、その活動を当面する問題解決のために方向づけ活溌ならしむることが肝要でありますので前年度に引き続き補助金を交付してその育成強化を図る計画であります。
六、結核予防対策
 村民の保健衛生の上で結核予防対策は最も重要な問題でありまして、一九五九年度から三ヵ年計画で全村民の集団検診を行い、公看の住宅治療の強化と相まって結核新患者の早期発見に努力しておりますが一九六○年度も引続き全村民の結核に対して正しい知識を周知徹底せしめ、計画に基き集団検診に力を注ぎ結核予防に完璧を期し、同時に公衆衛生思想の普及徹底により健康で明るい村造り、村民福祉の増進を図る考えであります。
七、産業基本施設の整備と農業生産の増強
 灌漑用水施設、農道排水等の農業生産基本施設の不備と、防風防潮林の荒廃は農村本業振興の阻害条件でありますので、旱魃、防風潮害に対して適切な対策を講じて農業生産の安定化を図る計画であります。特に
(1)耕地分の大部は畑作であり水田率は四・七七%に過ぎない本村では畑地に対する灌漑施設は生産の増強に大きい役割を果たすものと考えまして、新たにこの種施設に対して、補助金を交付し奨励する計画であります。
(2)家族労働力の多くが軍作業に出稼ぎしているために、農耕働力は不足をしている現状を打解するには農道の整備による運搬能率の向上と、牛馬耕の奨励によって農耕働力の不足を補い農耕作業の改善にも十分な努力を払い、農耕適地の開墾奨励による地元増反と、堆肥舎、畜舎の改善、優良種苗の導入普及、共同苗床(フレーム増設)病害虫防除対策等の、農業経営農業技術の改善普及に努め、農業生産の増加を図る所存であります。
(3)農産物の商品化率は極めて低く、甘蔗以外に換金作業をもたない農家の現状に鑑み、葉煙草、果樹、蔬菜等の商品作物について、積極的にその導入と販路を研究して商品化率の向上に一段と力を入れる所存であります。
(4)糖業の振興について
五八年、五九年期は施設の改善と農家の協力、理事者の経営と自然的好条件によって、好成績を修めましたが、生産目標にはまだ五○%にも達していませんので蔗園拡張と、反収増加による増産を図ると共に農協の計画している施設の改善にも補助金を交付して糖業の振興を図る考えであります。
(5)畜産は本村の経済環境と農業経営の面から養豚が大きく発展し、質量ともに戦前以上の優良種が生産されていますが、豚価の不安定が農家経済に及ぼす影響は極めて大きく、近は香港向け生豚輸出の途が拓けましたが那覇琉球農連渡し価格であるため輸送費は農家負担となっているのでこの農家負担輸送費を助成し、また前年に引続き徹底した予防注射の実施により伝染病防遏し、優良種畜の導入に対しては補助金を交付して品種の改良普及に努める考えであります。
(6)防風林、防潮林、街路樹等を主体にした直営造林を行うと同時に、私有林地の造林を積極的に推進するため、その必要樹苗が確保出来るように村樹苗圃を増反し、部落にも樹苗圃を委託経営し健全苗による計画造林を進める計画であります。
八、教育の振興
 教育の振興と産業経済の発展は表裏一体で村民のひとしく要望している事でありますので、これが推進のため、あらゆる努力をはらっていきたいと思います。
 即ち本村における小中校の児童生徒の自然増加と教育文化の伸展に伴いまして学校敷地の拡張、給水給食施設、便所の増設改築、衛生施設、運動場の整備、学校周囲の塀等各種の施設、教具教材学校備品の充実等が要請されておりますがそれらに必要とする全経費の財源を教育税収入のみに依存することは村民負担が極めて過重となり村税に対して不均衡となりますので、村教育委員会に対して補助金を交付し村民負担の軽減を図り同時に施設の拡充して教育の振興を図る計画であります。
 社会教育については村民会館の完成をみましたので政治経済文化のセンターとして運営し、青年会、婦人会等の各種団体の講習会、研究会、講演会等の集会の場とし社会教育の発展に役だて、赤各字の公民館活動と相提携して新生活運動を推進し村民福祉の向上を図る所存であります。
九、海外移民の促進のため昨年度は手数料条例を改正して移民のために必要な諸証明料の減免を考慮実施してきましたが、今年度は更に移民奨励費として予算に計上し移民手続に要する諸経費に対して助成する考えであります。
 以上一九六○年度の予算の審議を要請するにあたりまして施策の大要を申し上げましたが才入才出予算総額九一、三八九弗で前年度より八、三三五弗の増となって居ります。予算細部については助役をして詳細に説明させることに致します。

〔写真〕「村民会館」原本参照

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