読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1960年12月発行 読谷村だより / 4頁

みんなでやる生活改善(6)

みんなでやる生活改善(6)

ものの見方について(続)
 よい台所を見ることによって「自分はまあ、これでやっておこうとおもっていたが、あとこれだけのお金を足せば、こんなによくなるものか」ということを知ります。よいものを見るということは、それを全部まねないにしても、その一部分ずつからいろいろのことを学ぶものであります。たとえば台所のなかの配置、流しや調理台などの型、寸法、の様式でもいろいろありますから、広く見て、そのうちから一番よいところを選んだらよいのです。また、出窓というものは大へん便利で、部屋の感じもよくなるものですが、これを見たことのない人はそのよさを知らないからやりません。あとでよそのを見て、たとえ計画を二度に分けてもやればよかったと後悔している人もあります。タイルや壁の色彩でもそうです。美しい色彩の配合をみたことのない人は同じくらいの費用をつかいながらまずい色の配合をしています。そのような意味で、よいものを見ることは、大切なことであります。
右は一例にすぎませんが、見学に出かける前に、このように何の目的で何を見学にいくかということをよく検討してから出かけないと、せっかくはるばる出かけても、十分な効果があがらないものであります。

◎自分の立場から、相手のものをはかってはそのものの真実は分からない。
◎世の中に完全なものはない。したがって完全な改善というものはないということであります。
さきにも述べたように、台所改善は他人にみてもらうためにやったのでなく、その人が住むために、その人の立場でやったものであります、だから条件のちがう人々が、そのままマネができないのは当然でありましょう。
つまり改善のやり方は、これをやる人の生活観(趣味教養、近代性)、資力、周囲の環境(自然条件、農業経営との関係)などによって、それぞれちがうのであります。その場合は、
◎この人はどのような立場にいる人で、それをどのように改善したか、
◎自分がやる場合には、どの点を学ぶべきか、どの点を学ぶべきでないか、といった見かたで見学すべきであろうと思います。
わたくしたちの生活には、”模範”と呼ぶ完全なものはありません。封建性の抜けきれない不完全な生活であり、完全の人間の生活がない限り、模範な住宅はないはずですし、たとえ作ってみてもナンセンスなものでしょう。架空な理想をこしらえてつくる設計図なら、どんなものでもできましょうし、作るのは勝手ですが、そこへ生きた人間は住めぬでしょう。デコボコの品物を真四角な器(うつは)におさめることができないと同じように、封建性の抜けきれない社会に住む人間(個人生活でも社会生活でも)の住む家だから理想な設計はできないのであります。
たとえば一年に一度か、二度のお客さんや、法要のときに困るから、住むのに不便でも、どうしても田の字型の構造の間取りが改められません。これが改められない限り、理想的な設計の間取は実現出来ません。もちろん、それを改めていくのが改善でありますが、住む人の生活観、社会生活の封建的な慣習が改められないかぎりは、一足飛びに完全にはならないのであります。だから住宅改善の見学においても、そこに住む人の生活観とならべてみるべきで、完全な、模範的な改善がこの世に存在するとおもってみると、いつも失望することでしょう。
 わたくしたちが先進地を見学する場合には、目に見えるところよりも、むしろ目に見えないもの、つまり、
①改善の動機。(2)改善するまでの苦心。(3)改善しようという雰囲気を、みんなの気持ちのなかに育て、みんながやるようになるまでに指導者はいかに苦労したか。④いかに協同したか、協同の効果はどうであったか。⑤改善の喜びとその効果⑥失敗の経験談。
などをよく学んできてもらいたいとおもいます。ことに失敗の経験談は非常に参考になるものであります。近ごろ、生活改善や、農業経営の先進地への見学がふえたことはこの方面への感心が一般に高かまったことを物語るので、大変よろこばしいことであります。この見学者のなかには、なかなか熱心な人もあって、たとえば、台所の改善など、夫婦づれでやって来て、お米を持参し実際にカマドを使わせてもらってその能率を調べたり、台所に半日ぐらい坐りこんで研究していかれる方もあるそうです。改善した農家では、そうした熱心な方々に自分たちの苦労話しや喜びを聞いてもらうのはうれしいもので、このような見学者は喜んで迎えております。それと反対に、見学を申し込んでおきながら、やって来ないで、その後なんの音沙汰もないことがあります。受入れ側では団体申込みに対しては昼食のためにお茶をわかしたり、案内者を待機させていたりして、ずいぶん迷惑をかけることもあります。
続く

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