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1961年1月発行 読谷村だより / 1頁

謹んで新年のお慶びを申上げます

謹んで新年のお慶びを申上げます
村長 知花 成昇

 輝かしい昭和三十六年の新春を村民の皆様と一緒に門毎に”日の丸”の旗をかざして迎えこうして年頭の御挨拶を申し上げる事が出来ますのは私の生涯でもっとも大きい喜びとするところであります。
 昭和三十五年は全県民が「復興から発展えの段階に」と大きく期待をかけて出発した年で政治的にも文化的にも大きな発展をとげた年でありました。国際的な全琉的な問題は別として、私達の郷土読谷にもいろいろ収穫の大きい年であったと存ずる次第であります。
 ”農協の製糖工場操業中止”という悪い条件ではありましたが村民の皆様の深い理解と御協力、それに天も私達に恵をたれ賜うて台風もなく御陰で蔗口面積も拡張され肥培管理も上々で蔗作農家にとっては前例のない豊作の年でありました。また豚価も「農家と農協との一本化」によって好価を維持したので七千頭で年を越すことが出来ました事は農家の皆様と共に御同慶に堪えません。
 その他学校の施設においても数多くの施設がなされました。農道や灌漑用溜池、河川護岸、排水等の農業基本施設も着々と整備されつつあります。街路並木簡易水道、部落内道路、消防用溜池等の民生施設も一つ一つ解決の緒口を見出しています。しかし乍ら郷土読谷村のおかれている地理的社会的条件は極めて複雑で困難な問題も次々に起っています。
 黙認耕作を許されていた残波岬一帯、波平通信隊跡、読谷飛行場等に射撃場や通信施設、落下傘部隊演習場等の軍施設が施工されるために役十万坪余の農作物の撤去が命令されたのであります。耕地の少い読谷にとっては大きい打撃であります。米国のドル防衛政策や貿易の自由化その他国際的な動きに対しては施政権を握っている米国民政府や琉球政府、立法院のお偉い方々が全住民の福祉のために善処されるであろうと信頼をするのでありますが、お互い村民としても新しい時代に応ずる体制を整えなければならないと思うのであります。現在のところ軍用地料も年間約七十六万弗の支払いがあり軍労務にも約千六百人位が就労していますので割合い現金まわりは良い方でありますのでいろいろの農家の施設も整備されつつあるのは誠に結構なことであります。しかし十年前払いが約四十万弗九年前払いが約四十万弗が支払されておりまた八年前払の申請済が四十六万弗となっていますのでこれからの年間軍用地料の支払いは遂年減少していくことは当然であります。勿論これ等の前払い地料が生産財に変ってどしどし生産拡大に役立てられる事は推奨すべき事でありますので前払受領に異論はありませんが将来の生活設計を確立する絶好の機会であり、また絶対にのがしてはならない時期であると思うのであります。我々の祖先が子孫の幸福を念願して残された大事な財産の軍用土地使用料を最も有意義に使う計画を各家族がしっかり樹立される事を念頭するものであります。
 残された僅かな土地でも是非開墾して生産増強に御協力をお願いします。基地原野に植林を施して緑の郷土を作るよう心がけたいと思います。各家庭の空地を最大限に利用して果樹茶園を造り一仙でも良いですから自家生産によって消費を節約したいものです。
 身近にある小さい良い事を数多く積重ねていく事によって平和で富める豊かな家庭が部落がそして村が建設されると確信する次第であります。今年は丑年であります牛の如く堅実に着々と一歩一歩踏しめて繁栄への道を進みましょう。畠に鍬を振る農家の皆様、大洋に網を投ずる漁家の皆様、工場にハンマーを握る皆様、家庭を守る主婦みんな力を合わせて希望に満ちた繁栄への道を歩みつづけましょう。村民の良き公僕として一生県命に働く事を年頭にお誓い申し上げて御挨拶と致します。

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