俳句
初汐 島 太郎
古里へ、続く初しお 汲みにけり。
夏帽に、目印つけて、療養す。
鷲や、妻の手紙を、ふところに。
大根の、煮ゆる匂いの隣より。
下水掻く、老におのれの、薬汁
声かけて、くれるがうれし草むしる。
足音に、声をおとしぬ、昼蛙。
ふるさとの、広報とどく 梅雨廊下。
長梅雨や、土産砂糖を、分ち食う。
よもぎ飯、煮て母のこと、ふと口に。
看護婦の白い足みせ、汐干狩り。
日焼けして、尚たくましき老の腕
二人蚊帳、吊りて一人の、夜深む。
われひとり、生き永らえて子供の日。
白百合や、園規にそむき、酒を酌む。
療園の天地狭しと、南瓜伸ぶ。
罪のごと、手に鎌くくり、草を刈る。
ペンよりも、鍬のかろしと春耕す。
キビ刈りの 老人ばかり 島は捨てず
打ち返す、土の匂いや、夏に入る。