第十回村婦人の主張大会から ものを大切にする 渡慶次婦人会 山内俊子
日進月歩の今日の科学時代において、私達の日常生活は実に急速に進歩をとげ、主婦の家界労働も質的変化をし、随分簡素化され、ゆとりが出たといわれます。とはいいますものの、急速な進歩や変化に対処できるだけの考える主婦になれるかどうか、やはり一抹の不安をおぼえることも否定できません。日常の生活を足もとからしっかりみつめ時代の波に流されることのないように経済的、精神的に安定した、充実した家庭を築くために、平凡なテーマではありますが、「ものを大切にする」ということについて考えてみたいと思います。
今年は、沖縄が復帰して五年目にあたります。復帰前に比べて復帰後の生活はどう変わったか、との問いに対して、ほとんどの人が暮らしにくくなったと、生活苦を訴えています。もちろん渡航の自由、道路の拡充整備、医療福祉の充実や、体育館等にみられる教育施設の整備など徐々によくなったことはうれしいことです。しかし、沖縄タイムス社の世論調査でも明らかにされたように四七%、約半数が諸物価の値上げに悩まされて生活が苦しいと答えています。それに加えて便乗値上げの現象も少なからずあり、家庭をきりもりする私達主婦の頭痛の種になっていることは、どなたもお感じになっていることではないかと思います。
しかし、私達は自分たちの生活を防衛するために、「物価が高い」、「物価が高い」、とぐちをこぼすことのみに走り過ぎるきらいはないでしょうか。勿論、不当な物価値上げや、便乗値上げは、みんなで監視しなければなりませんし、お世辞にも、現実の物価は安いとはいえませんが、わたしがここで申し上げたいことはぐちをこぼすことも結構でしょう。しかし、それだけでは、生活はちっとも楽にはなりません。もう少し、わたしたちの足もとをみつめ、創造し、工夫する生活態度が必要だということです。
ゴミ処理場には、ちょっと手を加えれば使える家具類や、電化製品がおしげもなく山と捨てられているようです。マスコミの異常なほどのコマーシャルにまどわされ、必要以上に物を買い、気がつくと無駄な出費をしてしまったと、思う方々も少なからずいらっしゃると思います。よく年配の方々から今の若い人達はぜいたくすぎるとしばしば指摘されます。特に若い人たちの”ファッション”については、つい流行にのせられてしまうという現実も否定できない事実と思います。ちょっと工夫し、更正すれば、子供の遊び着に十分活用出来るようなもの、又、その人の着こなしによっては流行に関係なく、利用できる衣類がタンスの奥にねむってはいないでしょうか。わたくしは子供の遊び着を更正して着せることに楽しみを見出している者のひとりです。わたくしの幼い頃は決して経済的には、めぐまれた方ではなく、母親や姉が作ってくれた洋服に愛着を感じたものです。そういう過去の思い出をひもときながら、ミシンを踏む楽しいひとときです。”流行”とは、何だろう、と考えることがあります。自分に合った生活、自分に似合うことが生活の基本であり、大事なことではないかと思います。
先日、小学校のPTAの席上で担任の先生のおはなしの中に上着、帽子、シャツ、かさなどの忘れものがあまりにも多く、しかも、そのほとんどは主が現われず、保管に困っていることや、名前がしるされていないことなどを話しておられました。この例などは一校や一学級に限られた特殊なこどではなく、日常的なことではないでしょうか。私達主婦は、勿論子供には「物を大切にしなさい」、「大切に使うんですよ」と、もののありがたさについて聞かせております。しかし、子供達は、言い聞かせられたことより、大人の生活態度から受ける影響が強く、大人のまねをすることが多いことも決していい過ぎで
はないようです。大人が物を大切にすることを身をもって示してあげることこそが、最も重要なことではないでしょうか。
本土のある高校生の意識調査の中で、物を買って与えても親に対する感謝の気持ちは、ほとんどなく、むしろ親として当然のことだと答えているのをみたことがありますが、消費こそ美徳であり、浪費もやむを得ないと、いう風潮の世の中では、子供達にせがまれて、つぎつぎ買い込むことが親の愛情の現われだという、誤った考えの中では、「物を大切にしなさい」、「節約しなさい」と声を大に叫んでも、一挙に意識をもつこともないでしょう。
しかし、中部のある小学校で、入学当初から卒業までの六ケ年間、同じランドセルを持ち続けた生徒が六人もいることで、先生方や父兄の間で話題になっているほほえましいニュースを耳にしたとき、美しい行為だと賛辞を送りたい気がいたしました。「ものを大切に」、ごくあたりまえのことですが、それがなかなか出来ないのが私たち人間であり、はんらん時代の社会であり、それが可能になったときにはじめて、生活の基盤がしっかり築かれるであろうし、充実した家庭を築くことにつながると思います。「物を大切にする」、それはとりもなおさず、”物への思いやり”、”人への思いやり”につながることだと思います。「物を思いやる心」、「他人を思いやる心」、今日のはんらん時代で、最も大切なことであり、それを考え、又は改め、実行することこそ、私達主婦に課せられた任務ではないでしょうか。
※写真は原本参照