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1983年8月発行 広報よみたん / 5頁

父と子 父親にとって居心地のいい家庭 東京都立大学教授心理学 詫摩武俊

父と子 父親にとって居心地のいい家庭 東京都立大学教授心理学 詫摩武俊
 父親不在とか父権失墜とかいわれて、家庭の中での父親のあり方が論じられています。非難するような論調もあれば、同情して激励する立場の人もいます。父親の側から考えると、父親にとって非常に居心地のいい家庭もあれば、帰宅するのに気が重く、独身時代がなつかしく思い出されるような家庭もあります。
 居心地というのは主観的なものです。晩酌・テレビ・風呂がありさえずれば満足という人もあるでしょう。何の世話もしてもらいたくないといって、食事も自分でつくり、他の家族とは無関係に暮らしている父親もいます。個人にとって居心地のいい状態は違うのです。
 しかし居心地がいいと感じさせる基本的な条件はあると思います。それは自分が家族に受け入れられ、期待され、大切にされていると思えるかどうかということです。妻や子供から頼りにされ、愛されているかどうかということです。「あっ、お父さんが帰ってきた」と子供が歓声をあげて出迎えれば、父親は疲れも忘れてしまうでしょう。
 人間の感情は相互的なものです。相手が自分に好意をもっていることがわかれば、こちらもその相手に好意をもちます。父親と家族の関係についても同じことが言えます。自分はこの家族に愛され、あてにされていると思うことが居心地のよさの第一の条件だと思います。
 父親が不在のとき、母親が父親のことをどう話すかによって、子供の父親に対する態度は大きく変化します。「あの人は駄目な人よ」というような否定的な評価をしていると、子供は父親に攻撃的になったり無視したりします。子供が母親の肩ばかりもって自分に反抗的になるのは、父親にとっては悲しく、不愉快なことです。このような場合、なぜそうなったかの原因はたいへん複雑ですが、これが家庭を崩壊へと導くひとつの要因であることは間違いないことなのです。

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