第一三回中部地区婦人の主張大会から 三世代同居を願う一人として 読谷村婦人会比嘉恵子
夜の九時を過ぎると、わが家の三人の子どもたちが毎日ジャンケンをはじめます。おじいさんとおばあさん二人でさみしいから一緒に寝てあげるということで今日は誰が一緒に寝るかを決めようという訳です。
私がこの家に嫁いで両親兄弟との同居生活が早いもので十年たちました。太平洋戦争で、両親、兄弟をのこらず失ってしまった舅の強い希望でいやおうなくの同居生活でした。「三世代同居」を夢みる舅の気持も充分理解できましたので、あまり抵抗なく同居することになりました。
ところが現実はそうあまいものではありませんでした。一人子として気ままにのんびり育った私には、大家族の生活ははるかに私の想像をこえたものでした。朝から晩まで家族それぞれの友人や、親戚、そして子ども達がいれかわりたちかわり訪れ、にぎやかさを通りこしてわずらわしく思う事もあり、結婚前のように静かに暮らしたいとどんなに思ったことでしょう。
そのうち長女が生れました。子どもの頃から殆ど子守りなどした事なく育った私は、育児書を片手に育児しようと一生懸命になるのですが、一生懸命になればなる程育児書通りにうまくは行きませんでした。
そんな私に、手を取り、但を取り、育児を教えてくれたのが六名の子を産み育てあげた経験豊な姑や、おばでありました。
もし私が、何も知らない私が、一人で子育てをしていたらどうなっていたでしょうか。泣き虫の子を抱きながら、一緒になって毎日泣いていたのではないかと思います。新聞ざたになるような「若い母親が、育児ノイローゼで子を殺す。」という事が人ごとでないと思ったものです。三人の子を無事育てることができたのは、両親と同居したからだとつくづく思い、感謝の気持でいっぱいでした。
私を嫁に迎えるにあたり舅と姑は一大決心をしたようでした。親子水いらずで生活していた中に、嫁というアカの他人が入ってくるのだから、いろいろなトラブルが起こるのは仕方のないことで、それを当然だと思い、問題を解決しながら仲よく生活を共にしていくには、お互いに心を打ち割って話合をしていかなければならない事を。
そして舅は何かあるたびに私にこういう事を話してくれました。「私と妻は、嫁を自分の息子が選んだ人であり、縁あって親子になったのだから、自分の娘以上にかかわって生きていかなければならないのです。私も、いかにしていい関係を保ち生活していかなければならないかを考え、心をくばり努力しました。
でも、お互い生身の人間です。世代の違い、兄弟とのトラブル、子どもの教育方針などのくい違いで幾度か問題もあり、子どもが生まれた頃の感謝の気持を忘れ、「親子五人で気楽に暮らしたい」と何度思ったことでしょう。そして家族の人間関係がうまくいってない時に限って子どもが、ひきつけをしたり、三人一緒に熱を出したりしたものでした。それで家族の和がいかに大切であるかをつくづく知りました。今では三人の子どもたちも大ぜいの家族のもとで、心身共にすくすく育ち、そして、両親、兄弟と心おきなく何でも話し合い、お互いに支え、支えられ毎日が成り立っています。
総理府の調査によりますと、年老いた両親の七○%は子どもと同居しており、十年以上先も六○%は同居を保つだろうと予想されています。しかしながら確実に現在、核家族の傾向が都会だけでなく、私たちの住む農村社会にもおしよせてきました。親との同居が敬遠され、別居が当り前、というような風潮が子どもの側だけでなく親の側にもあります。「子どもが別居したいというのを無理に、一緒に住む必要もない。子どもは子ども、親は親。」等といい、別居をするのが当然のようになってまいりました。金や物が豊かになった現在の人たちは、わずらわしいものや面倒くさいものはさけて通るようになってまいりました。仕事の都合や住宅事情のため、仕方なく別居するのはやむをえないとしても、定年後は職場から遠く離れ老人夫婦だけで住む欧米の社会と違い日本の社会では多くのお年寄りは子どもと同居し、老人ホームなどに行きたがらないのが普通です。いずれ同居しなければならないのなら親との生活のリズムを早いうちに自分のものとしてつかんだ方がいいのではないかと私は思います。別々に暮らし、いざ親が病気で体が動かせなくなった時心から親身になってお世話できるでしょうか。生み育てられた娘ならできるでしょう。しかし、嫁は毎日の一緒の生活の中からしか情が芽ばえてこないのです。
建設省の今年の住宅需要実態調査で、別居している親の多くが同居するのをせつに希望している結果が出ております。そこで高齢化社会に対応した三世代同居の新住宅計画を打ち出すことが明らかになりました。生活時間の違いのある三世代の家族でも充分に生活できる計画であり、家族関係はかなり好転してくるのではと、期待できそうです。この場をおかりして、嫁として、さらに二〇年後は嫁を迎えるであろう母親としての立場から同居問題を皆様とともに考えていきたいと申しますのは、年々、平均寿命がのびる現在の社会では、核家族が増えることによって、さみしいお年寄りの方が確実に増えております。そして、子どもたちはといいますと、共働きが多くなり、家に帰っても温く接してくれる母親は仕事で不在という事になります。
わたくし達が幼い頃は、必ずという程、家に誰か一人は在宅者がおり、「おかえりなさい。」といってくれる人がいました。その言葉を聞くと安心したものです。現在の核家族の中で祖父母の豊かな愛情を体いっぱい受ける事ができるでしょうか。
校内暴力や家庭内暴力が増加し、子どもたちの非行が、大きな社会問題となっている現在、さまざまな原因があげられていますが、核家族が増えているのは、みのがすことのできない事実だと思います。同居はとかく問題を起こしやすく、ややもすると取り返しのつかない関係に発展する場合もあります。
しかし親も子もお互いに相手を思いやる寛容さと、協調性を忘れず、心を開いて語りあい、支えあいながら生活していくことが次代を担う子どもたちに、身をもって教えることのできる一つの道だと信じて進んでいきたいと思っております。
※写真は原本参照