読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1991年8月発行 広報よみたん / 8頁

【見出し】よみたんの民話読谷村民話資料集より再話 継子と仲順大主 エイサーの始まり 【写真:1】

 むかし、あるところに、両親とヤマという男の子と三人、仲良くくらしていました。
 ヤマが三歳になったとき、おかあさんは病気になり、おとうさんの手厚い看病もむなしく、幼ないヤマのことを心残りにして死んでしまったのです。
 まだおかあさんの死がよくわからないヤマは
「おかあさんがいないよー、おかあさんがいないよー」
と泣いてばかりいました。
 それを見かねたおとうさんは、
「この子には母親が必要なんだ」
と二番目の妻をめとりました。
 けれども、新しいお継母さんはヤマに辛くあたりました。
 しばらくして、ヤマに弟ができました。ヤマは喜んでいっしょに、野や山をかけめぐって遊びました。
 それでもお継母さんは、ヤマを粗末に扱い、行いが悪いとか、何やかやにつけてガミガミ叱りとばし、食べる物にしても弟にはおいしいのを食べさせヤマにはまずいものばかりを上げていました。
 ある日のこと、弟がヤマの大切にしている鳥かごをこわしたことからケンカになり、
 「おにいさんのくせして弟をいじめるとは何ということだ。おまえなんか出て行け!」
とこっぴどく叱られました。
 あたりはすでに暗くなっているというのに家から閉め出されてしまったのです。
 七歳になったばかりのヤマは、
「ほんとうのおかあさんではないからこんなにぼくを苦しめるんだ」
と暗闇の中でさんざん泣きました。
 泣きながらあてもなく夜道を歩いていると、仲順大主というおじいさんに会いました。
「おじいさん、おじいさん、ちょっと待って下さい」
「子どもではないか、夜も更けてきたというのにどうしたのか」
「ぼくは三つの年に母親を失ない、五つの年にその母のことを思い出し、七つの年に感じとって、ほんとうのおかあさんに会いたくて、こうして歩いているのです。どうしたら会えるか、おじいさん!おしえて下さい」
「そうか、でもな、おまえのおかあさんには、ふだんは会えないよ。七月七夕、中の十日にクラグシをたくさん積みあげなさい。後生のナナジョーを開かしなさい。そして亀甲墓のマユがあるでしょう。マユの真中にクラグシを立てて、それを左の袖で隠して、右の袖からひと目拝みなさいと言われました。
 ヤマはそれを聞いてすこし元気をとりもどしました。
 わずかな月の光がさし、木がうっそうと茂った細い道をヤマはおかあさん会いたさに墓まで来ると言われたとおりにやってみました。
「あっ、おかあさん」
「どうしておまえはここへ来た!」
「ぼくは、もう家へは帰れません。いつも怒鳴られるばかりで、他に行くところもなくて、ここしかないのです」
「ここはおまえの来るところではありません。早く家へお帰り!」
と言っても帰ろうとしないので、おかあさんは幽霊になっておとうさんの前へ現われました。
そして、
「ヤマが墓庭に座りこんでいるが連れ戻してもらえないか」
と頼みました。おとうさんは継母がヤマを苦しめていたとはこれぽちも知りませんでした。幽霊はしつこく現れるものだから、極楽は通ってないんだなと心配し、サンを作って追い払いました。
 その後も、ヤマは
「ぼくはおかあさんといっしょにいたい」
と来るので、死んだおかあさんは
「おまえだけでも、七月、正月になったらお茶と水のお初を供えてくれ。アーケージュー(とんぼ)が飛んできたら母と思いなさい。ハーべールーが飛んだら母と思いなさい。冬が来て、夏が来て、雨が降れば、朝夕おかあさんが見ていると思いなさい」
と言って消えました。
 それから、七月七夕から十五日までは祖先に対して「後生極楽して下さい」と御願を立てて拝みました。
 十六日になると、「何の気残りもなく盆を送って下さい。そして踊ってお目にかけましょう」と、
  エイサーエイサー
  スリサーサ
と歌や三線、太鼓の音も脈やかに祖霊への最大の祈りをこめて、歌い、踊りあげるエイサーが始まったということです。
 それから、右の袖の下から後生が見えるのは七月だけということなんですよ。

(注)
●仲順大主 大主は仲順間切仲順村(現北中城村仲順)の創始者であり、大主の時代に王位を英和に譲っ て、野に降った義本王が国頭の奥地から、読谷山に移りそこに寄遇していたころ、大主の善政を噂に 聞いて、王は仲順に身を寄せ大主の厚遇を受けて晩年を過ごしたということである。
●クラグシ 雄馬をくびるもの。
●ナナジョー 七門。後生の世界に行くには七門、いわゆる七つの関所を越えていくという信仰。マユ 眉。亀甲墓は俗に、母体を象ったものだと言われ、それぞれ部分名称があり、墓の顔の上方にかぶさ った弓形の石組をマユと称している。
●サン ススキの葉を結んで作ったもので、魔除けとして用いるものをいう。

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