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2007年11月発行 広報よみたん / 2頁

沖縄県民は歴史の歪曲を許さない 9.29県民大会に多くの村民が参加!

沖縄県民は歴史の歪曲を許さない
9.29県民大会に多くの村民が参加!
 怒りと憤りの中で開催された「教科書検定意見撤回を求める県民大会」(主催:同実行委員会)は、主催者の予想を遙かに上回る11万人余が集まりました。そして今、県民の平和への強い思いがうねりとなって世論を動かしつつあります。しかし、政府は記述回復には柔軟な態度を示したものの、検定意見に政府の関与があってはいけないとの理由で、意見の撤回は難しいとの考えを示しました。
 大会で示された県民の総意は、『検定意見の撤回』と『記述の回復』です。読谷村は「集団自決」が起きた村として、子どもたちに歴史の真実を正しく伝え、「集団自決」で命を落とした先人達の魂の訴えに応えるためにも、今一度、一連の教科書検定問題について考えてみたいと思います。

経緯
今年3月の高等学校歴史教科書の検定意見で「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある表現」との指摘を受け、各教科書会社が「集団自決」への旧日本軍の関与を示す記述を削除。その結果、「住民の意志」で集団自決したと読み取られる記述となりました。検定意見の理由として文科省は、「日本軍の命令があったか明らかではない」、「最近の研究成果で軍命はなかったという説がある」ことなどをあげていますが、この悲惨な出来事は、軍の関与なしでは起こりえなかった紛れもない事実であり、今回の削除・修正は体験者や遺族の証言を否定するものです。
 これに対して、県内全市町村議会は、「教科書検定意見に関する意見書」を可決。県議会においても6月、7月と2度に渡って意見書を全会一致で可決するなど、文科省に対して『検定意見の撤回』と『記述の回復』が速やかに行われるように要請しましたが、文科省は検定意見については教科用図書検定調査審議会が決定することとして、前向きな回答は得られませんでした。
 膠着した状況の中、9月に入り、県民総ぐるみで検定意見の撤回を求めようと、仲里利信県議会議長を実行委員長に「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会が発足。これを受け、9月12日、読谷村においても県民大会読谷村実行委員会を設立しました。同実行委員会は安田村長を委員長に村内23団体で組織され、「『集団自決』が起きた村として、歴史の真実を伝えるため検定意見の撤回をなんとしても勝ち取ろう」と、村民に対し県民大会へ参加の呼びかけを行いました。その後、県内他市町村でも実行委員会が設立されたことを受け、仲井真弘多県知事、仲村守和県教育長も大会への参加を表明。まさに県民総ぐるみでの検定意見撤回を求める大会となりました。
県民大会当日
歴史の真実を後世に伝えていく。9月29日、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が宜野湾海浜公園で開催されました。読谷村では県民大会を前に出発式が行われ、安田村長は「このように多くの村民の皆さまに集まっていただけたのも、それぞれが『検定意見の撤回』と『記述の回復』に対し熱い思いがあるからだと思います。我々沖縄県民の思いを文科省まで届けてきましょう。」とあいさつすると、参加者たちはバスに乗り込み会場へ向かいました。
 大会では、はじめに仲里実行委員長が「軍命による『集団自決』だったのか、あるいは文科省のいう『自ら進んで死を選択した』と殉国美談を認めるかが問われている大会です。県民が一丸となって「軍隊による強制」の削除に断固ノーと叫ぼう。」と訴えました。また高校生代表として壇上に立った、読谷高校3年生の津嘉山拡大くん、照屋奈津美さんは「この記述を消そうとしている人たちは、沖縄戦を体験したおじー・おばーが嘘をついているというのか。チビチリガマにいた人たちや、肉親を失った人たちの証言を否定できるのか。嘘を真実と言わないでほしい。あの醜い戦争を美化しないでほしい。例え醜くても真実を知りたい。学びたい。そして伝えたい。」と述べました。そのほか仲井真県知事らがあいさつを行い、文科省による検定意見に強く抗議し、遺憾の意を表明したほか、渡嘉敷島、座間味島での「集団自決」体験者らが重い胸の内を明かし、無念のうちに亡くなった多くの御霊に、沖縄戦の実相と教訓を伝え続けることを誓いました。
 大会の最後には、『検定意見撤回』と『記述の回復』を求める決議書が満場一致で可決され、県民の強い思いが示されました。
県民大会後
10月3日、県民大会実行委員長の仲里県議会議長、仲井真県知事、県関係国会議員らは、県民の総意を後ろ盾に、渡海文科相に面会。大会決議文を読み上げ、『検定意見の撤回』と『記述の回復』を要請しました。『記述の回復』には柔軟な姿勢を示したものの、「教科書検定審議会に政府の関与があってはいけない」とし、『検定意見の撤回』には応じることができないとの考えを示しました。その後、文科省は「検定意見が活きている内は、元通りの記述の回復は難しい」とし、教科書会社の訂正申請手続きを前提に、「日本軍の『強制』よりも『関与』程度の内容であれば訂正をしてよいのでは」との考えを示したため、記述の完全なる回復は難しい状況となっています。
 これに対し、教科書会社は訂正申請を検討していますが、記述がどの程度認められるかが不透明な状況となっています。また『検定意見の撤回』について実行委員会は、再三にわたって要請行動を行っていますが、文科省の重い扉は未だ閉じられたままです。 
 現在、東京都千代田区議会などが、教科書記述の回復を求める意見書を可決するなど、着実に沖縄県民の意志が全国へと広まりつつあります。このような中、読谷村民がただの傍観者とならず、村内でおきた「パラシュート降下訓練阻止」、「アンテナ基地建設阻止」など、平和を守るための闘いの教訓を活かし、「ものを言う村民」として、次代を担う子どもたちへ歴史の真実を伝えるためにも、今何をするべきなのかを考え行動することを期待します。

村長からのお礼
このたび、多くの村民が県民大会に参加していただき感謝申し上げます。11万人余の参加者のエネルギーが、政府を動かし『検定意見の撤回』、『記述の回復』が実現できるものと考えております。村といたしましても、大会で示された『県民の総意』のもと、その実現に向け実行委員会と共に要請活動を展開していく所存であります。時の権力者たちに、事実をねじ曲げられないためにも、今後とも村民各位のご理解とご協力をお願い申し上げます。
      読谷村長 安田慶造
写真説明 (写真提供:琉球新報社) ▲有志による県民大会参加の呼びかけ(大湾交差点)
     ▲読谷高校ダンス部 平和へのメッセージを込め演技(写真提供:琉球新報社)
     ▲村出発式だけでも約750名が参加 
     ▲会場を埋めつくした約11万人のエネルギーを一つに頑張ろうを三唱(写真提供:琉球新報社)

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