読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1956年10月発行 読谷村便り / 1頁

読谷村の概況(続)

読谷村の概況(続)
五、産業経済の動力について
1、農業
 戦前戦後を通じて本村産業の大宗は農業である。しかし、農業の産業上に於ける地位は戦前は戦前とは比較にならぬ程低位にある事は衆知の通りであって、これは農業とは「土地を耕作する方法と技術」と云うことで、つまり農業は生産要素として土地の生産力を利用するただ一つの産業であるから、他の産業とは比べものにならぬ程「土地」と云うものが、他の生産業のどれよりも重要である。
 従って本村の如く軍用地に多くの土地を接収され「土地が狭く人は多い」と云う実情からして農業の地位にも大きく変化をもたらすのは当然のことであらう。戦前(昭和拾弐年)に於ける職業別戸口及び生産額をあげると次表の通りで総人口の九四%は農業によって扶養され、亦生産額に於いても六七%が農業によって占められ農業の持つウエイトは非常に大きかった。

(イ)職業別現住人口
農作業 本業戸数 2,982 本業人口 15,050 構成比 94.5
畜産業 本業戸数 - 本業人口 - 構成比 - 
蚕 業 本業戸数 - 本業人口 - 構成比 - 
林 業 本籍戸数 - 本業人口 - 構成比 - 
水産業 本籍戸数 - 本業人口 - 構成比 - 
鉱 業 本業戸数 2 本業人口 7 構成比 - 
工 業 本業戸数 37 本業人口 144 構成比 1.0
商 業 本業戸数 79 本業人口 363 構成比 2.3
交通業 本業戸数 5 本業人口 16 構成比 
公務自由業 本業戸数 47 本業人口 178 構成比 1.2
其地有業者 本業戸数 17 本業人口 38 構成比
家事使用人 本業戸数 - 本業人口 - 構成比 -
無 職 本業戸数 5 本業人口 5 構成比 

 計 本業戸数 3,185 本業人口 15,865 構成比

(ロ)生産額
農 業 生産額 971,579 構成比 66.6
畜産業 生産額 108,486 構成比 7.4
林 業 生産額 52,786 構成比 3.6
鉱 業 生産額 13,407 構成比 0.6
水産業 生産額 7,938 構成比 0.6
工 業 生産額 304,027 構成比 20.9

 計 生産額 1,458,223 構成比 100.0

(注)生産額は戦前の価額そのままであるから、現在と比較するには対戦前の物価指数(約160)で換算しなければならない。
 しかるに耕地の大半を失った現在一戸当り1.9反の耕地しか持たず極度に零細化された農業経営であり乍らなおかつ農業を以って本村の基地産業としなけでばならないところに本村のなやみがある。 以下その問題点をあげ戦前戦後を比較しつつ検討を加えて見よう。
(一) 農耕地が極度に減少した今次の対戦の結果は村の総面積の72%も軍用地に接収された。
 即ち総面積31,798反の中で耕地面積の占める割合は黙認地を含め僅かに17%にすぎない。戦前は(昭和拾弐年)19,626反の耕地を有し総面積の約60%が耕地であった。

▲耕地率(総面積に対する耕地面積の割合)
戦前(昭和十二年)総面積 32,727反 耕地面積耕地率 19,626反59.9
戦後(一九五五年)総面積 31,798反 耕地面積耕地率 5,637反17.7

(二) 耕地は減少したが農家は依然として総戸数の76%を占めている。

農家率(総戸数に対する農家数の割合)
戦前(昭和十二年) 総戸数 3,185 農家戸数 2,920 農家率 91.6
戦後(一九五五年) 総戸数 3,726 農家戸数 2,843 農家率 76.0

(三) (一)(二)の結果は農家の経営規模が極度に零細化され農家の大部分は5反未満の経営農家である。

▲経営規模別農家戸数
戦前(昭和十二年) 農家戸数 2,920 五反未満 1,414 五反-一町 1,017 一町以上 489
戦後(一九五四年) 農家戸数 3,044 五反未満 2,908 五反-一町 137 一町以上 9

▲経営状態別農家戸数
戦前(昭和十一年) 自作農 1,855 小作農 189 自小作農 876 計 2,920
戦後(一九五四年) 自作農 1,282 小作農 638 自小作農 1,124 計 3,044

財政報告について
 従来本村においては毎会計年度に於ける歳入歳出予算と決算については公表をして来ましたが、今回は財政運営面の全般にわたり述べて見たいと思います。
 財政の仕組みには特別な技術があり且つ複雑難解のため従来多くの村民にとって無理解のままにそれが運営されたのではないかと案じられるのであります。財政の運営に対して村民が充分理解して頂き、そして積極的に協力して頂くことによって始めて自治制度(住民が自主的、自立的」に自らの政治行政を運営する制度)が確立され読谷村の自治発展が期せられると思います。公共の福祉増進、村民の経済的、文化的、生活の向上を図ることを目的とする政治は財政の裏付けにより合理的に運営されるものであり、又年間の行政内容は予算の合理的編成により反映されるものであります。従って村の政治行政は直接村民の日常生活に関係するものであり村民の自らの手によってこれを運営すると言うことが地方自治の本旨でありますから村民がもっと積極的に村の政治行政の運営、そしてその裏付となる財政面に関心と理解とをもたれ協力して頂き福利増進をモットーとするサービス行政の実を挙げさせて頂きますよう祈念している次第であります。

一.地方税制度の改革について
 御承知の通り現行の市町村税法は一九五四年十二月より公布され、一九五五年四月一日をもって施行されたのであり、一九五六会計年度の村税から適用されているわけであります。
 これは過去における中央集権的な税制を大巾に改革し、現行の地方自治制度に即応する自主的、民主的な税制を確立し、地方自治の育成発展を図るという意味において真に意義深いものがあるといえませう。 従来の地方団体は政治的地位が極めて低く行政事務においても中央よりの委任事務がその中枢をなし、ややもすれば単なる行政区制におちいる傾向にありました。これに対応する税制度に於も又税源に弾力性がなく中央集権化の傾向にあり地方自治の発展を期するには到底不可能な制度であったと言えます。ところが終戦後統治制度の一環として地方自治制度が大きく取上げあれ地方分権を基盤とする現行制度が採用されることになり、これに即して地方税制度も又一大変革がなされたのであります。以下新税法の改正点につき概略説明を加えたいと思います。
 新税法の改正点を申し上げますと
(1)申告制度の採用
(2)財産税の拡充
(3)自主性、弾力性の強化
(4)課税権の拡張
(5)雑税の整理
等であり、これが実現に相伴って俟って勢い地方自治の整備強化及びこれを裏付けする地方財政の自主性が強く要請されるようになったのであります。即ち旧法において「申告」については条例事項として市町村にまかされていたのであるが、新税法については各税目にわたって申告の義務を規定し、その申告された資料に基づいて課税標準額を決定するという合理的な民主的な方法を採用し村民の納得いくような税務行政を可能ならしめようとしているのであります。

利用者アンケート サイト継続のために、利用者のご意見を募集しています。