読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1958年2月発行 読谷村だより / 3頁

社会福祉事業研修通信

〔20号2ページの続き〕

たる人、病める者、まずしき者等が大宝律令で救済の対象になったようです。
(三)篤志家や教会の行う慈善的事業より国家公共団体の行う救済事業への発展、昔は篤志家や教会によって個人の任意的に人道的な慈善行為によって、世の困った人々えの施与が行われその対象も、それほどに多くなかった、が社会の進展にともない保護の対象(種類)が増え、人口の増加は要保護者の絶対数が増加し現在では全国一九○万人(六五万世帯)もあり年間扶助額二五○億円の多額にのぼっている。心理学、医学、精神医学等の学門の進歩と民主々義思想の発展はこれを一部の篤志家や宗教団体にのみまかしておけなくなった。日本国憲法第二十五条は「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とうたわれており、社会福祉に関する生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法等いわゆる福祉三法を始めとして数多くの福祉関係の諸法令が相次いで制定されるに至った。
(四)社会事業は専門技術者を必要とするに至った。
社会事業が個人の慈善として任意に行われていた時代は慈善家にあっても専門の社会事業技術を必要としなかったが対象が増加し社会福祉行政はその範囲も広くなり、関係法令も複雑多岐にわたり、国や地方公共団体のいわゆる公費で賄われるようになったので、少い人数で少い経費で、しかも最大の効果を修めるには社会事業に従事する人々の高いテクニックを必要とされるに到り、社会事業従事者の養成機関が必要とされ我が国では昭和二年中央社会事業協会で社会事業研究生制度を始めたのが本格的養成の初めてあり戦後昭和二十一年に日本社会事業専門学校が設立され今日の短期大学となり今年から四年生の大学に発展するように成った。また社会事業従事者の現任訓練、再教育等のために研修期間が設けられた。この研修所は社会事業職員研修所として厚生省の委託を受け日社大学が経営し現に主事や福祉事務所の職員を対象に、亦地域社会福祉に関する調査、綜合企画、連絡調整弘報等に活動する社会福祉協議会において働く者えの研修のために全日本社会福祉協議会の直営する社会事業研修所が同時に開講されているのであります。従って社会福祉事業法第十八条の資格基準によって講義が進められ福祉主事としての資格を授与されるのであるが、要は日本の社会事業の発展のために役立つ専門家として活躍出来るよう体に注意して最後まで勉強し各々の職域で役立たせて戴きたい。
 以上は研修第一日目に行われた特別講義の要旨であります勿論最初におことわり致しましたとおり社会事業に対する智識をもたない田舎者の私が東京の真中にひよつくりあらわれて船のつかれも長い汽車旅行の疲れも療す間もなく受講したものを書きならべたのでありますから誤りも聞きもらしも沢山ありましょう、緊張していましたが一言一句を覚える事もノートする事も困難でしたから一応その要点を綴ってみました。
 これから八週間に亘って早生大学、日本社会事業大学、明治大学、立教大学、東邦医大、順天堂大学の教授、助教授や厚生省社会局事務官、全日本社協の職員等日本における社会事業の権威者によって社会事業基礎知識としての歴史、理念、形態社会福祉事業行政論、公的扶助論、児童福祉論、社会保障、社会政策等むつかしい講義が進められる事になっています。
 立法院議員の選挙や共進会政府助成工事その他種々雑多の役所業務の繁忙の時期に多額の村中部、沖社協の助成を受けて日本まで研修出張させて戴いた御好意に感謝しその恩に報ゆるべく寒さに負けずにうんと勉強して村の発展に役立たせる覚悟を新にしています。最後に皆さんの御建斗お祈り致しまして研修通信第一号と致します。
さようなら
一九五八年一月二十六日
知花成昇
読谷村長 伊波俊昭殿
外職員一同

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