読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1964年1月発行 読谷村だより / 4頁

台湾の産業視察報告 

〔90号2・3ページの続き〕

九五千ヘクタール(二八五百万坪)にして、その普及率はN・C・O三一○号が七○%、下一四六号が一五%と、其の他一五%となっております。
農作物の価格設定は、中央政府経済部内に、農業経済委員会という機関があってここで作物の補償価格を審議決定されるようです。また台湾の農家は作付面積の割当とか、制限とかはなく作物の選択は自由にして甘蔗作農家なら、植付前に、糖業公司と契約を結んで後に作付するようです。

△台湾には中央政府の種畜場と、台糖公司の種畜場がありますが、台糖公司では、五ヶ所の種畜場があって、種母豚総数二・五○○頭、肉豚五○・○○〇頭飼育しています。私たちが見た員林種畜場の養豚場では、桃園種(在来種)バークシャー、ヨークシャーが多く、最近米国からジャジー、ランドレースの優良豚が輸入され、只今下一の更新を推進しているとのことでした。豚舎は瓦葺長家で多頭飼育の粉飼を行って飼育管理は立派ですが、一般農家に対する優良品種の普及はまだまだ行届いておりません。

△台湾におけるマシュルーム(西洋松茸)の総生産高は年間一二○万ケースといわれますが、このマシュルームは、亜熱帯地域に適しており、従って台中県以北が、その産地であります。
気温は十七度から二三度までが適当な温度で十月から翌年三月頃までが適期であります。生産高は、坪当二○K、一Kの値段は一級品で三四仙、二級品が二五仙ですが、一農家で五○○坪も栽培したところもあるようですから、その収入は二級品の計算でも二・五○○ドルの収益を挙げることになり、有望な産業だと思いました。

△今回の台湾観察で最も感心したのは、灌漑排水施設でありました。農業は水利なくして増産はあり得ない。降った雨を、そのまま海に流しては勿体ない、ダムをつくって農業用に、工業水及び水力電気に用いております。灌漑施設は、日本時代からの善政であったと見えて、其の後拡大建設されたようですが、只今台湾省政府の計画によりますと、低位地帯にはダムを高台地域にはボーリング井戸を、年次的に建設する計画で推進中でありますが政府では、地下水開発のために、米国製三台、西ドイツ製三台の大型ボーリング機械を購入して、じゃんじゃんボーリング井戸を建設中であります。
このボーリング機械は一台で五万ドルの高価なものですが、二五○フィートの井戸を約二週間で完成するとのことでした。私たちが見た彰化県斗農田水利会のボーリング井戸は、一分間で二・○○○ガロンのも放水しますからほんとうにぼっくりしました。こうした計画による灌漑施設の受益面積は四七三・六○○町歩となっているようです。

△総統府及び台湾省政府の上層幹部は殆んど中国人で日本語は話せないが、課長以下の職員は台湾人が多いそうで、どこの官庁に行っても言葉の不自由はなかった。また、商店や食堂、ホテル等でも一人位は日本語を話す者がいて、便利です。更に台湾には藩社地区という原住民だけの部落があるようですが、ここでは今でも日本語だけを使っているとのことです。
文字を読むと、たいていの意味はわかりますが、自動車を「汽車」と書き、汽車を「火車」野球を「棒球」とセメントを「水泥」と書きその読方が違うので困ります。
貨幣は、一ドルで台湾の四○円になります。価は国産品は安いが外来品は、沖縄より高いと思いました。
教育制度は小学校六年までが義務制で中学以上は選抜制となっていますが、小学校一年生から漢字を習うので何んだかへんな感じを受けました。
都市は練瓦建の高層建築が立並び、市内道路は殆んど舗装されて、とても立派です。
観光資源は実に豊富ですが政府の観光政策は、さほど重要視していないように思いました。只一つ国賓館といわれるグランドホテルは元の台湾神社の隣にありますが、この建物は国費六○○万ドルを投じた純中国風の豪華なものであります。軍事国家であるせいか治安面は、徹底的に守られているようです。話によれば酔払や交通事故も極く僅かで、殺人、強盗、暴力事件等は皆無の状態だと聞きました。
最後に台湾の気候は沖縄とよく似ている関係上、農作物でもいろいろの植物や果物でも、我が沖縄に適すると思いますのでこれらの優良品種を輸入して、換金作物の増産を図るべきだと思いました。また、ダム及地下水開発事業の組織及計画建設等については、確かに良い勉強になったと思います。
現在推進中である農業構造改善事業の一環として、是非大型のボーリング機械を外国から購入して、地下水源の開発を急ぐべきだと感じました。以上簡単ですがこれをもって台湾の視察報告を終わります。

※写真「斗六のボーリング井戸」「マシルーム小屋台中の農家で」は原本参照

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