読者のサロン
秋蝉 島 太郎
子らの声涼しく老のでかい耳
碁の友の大きな耳や部屋涼し
古里の話しはずみて夕涼み
明月に老の暮しを覗かれて
大部屋にひとりの夜の遠蛙(とおかわず)
ミサへ行く老人ばかり蝉時雨
下水掻く間も老い行けり秋の蝉
秋蝉や励し合って療養す
目くばせで通じ合ふ中日向にし
老人の日課の一つ 草を刈る
夏負けて顔に老斑残りおり
向日葵(ひまわり)の軒より高く盲ム住む
冬ユーナ母の匂いのある如し
波の音を歌と聞きつつ冬支度
老いてなほ仕事の鬼や冬木割る
秋日射し無口の老も口ひらく
来し方の消ては浮ぶ 夜長かな
碁を打って二日ことなく暮にけり
菊の鉢並べて老の息ととのう