第2回動く美術館展終了に当って 美術評論家・社団法人日本外交協会常務理事 川島博
動く美術館の第二回読谷村展は色々な話題と教訓を残して無事終了致すことができました。村民の皆様方が積極的に参加観賞されたご姿勢に先ず心から敬意を表します。
私は一昨年二月に、平素ご親交頂いています古堅中学校の中石校長の紹介でお会いした新崎教育長が、高い理念と情熱を持って文化村建設に意欲を示されておられる山内村長のご意志を体して読谷村での開催の要請に見えられたのがご縁で、昨年二月に第一回の動く美術館展を貧村で開催致し今回の第二回展とつながったわけであります。そもそも動く美術館は地方の方々にその地に居ながらにして価値ある芸術作品にふれられる機会を提供し、より充実した文化生活への意欲と向上を願って全国を巡歴している地方文化の啓発展覧会であります。
さて、昨年度の読谷展は六日間の期間でしたが、古堅中学校全生徒の振替授業観賞をはじめとした各校の観賞参加と村民の皆様のご来館が続き、美術文化に対する積極的姿勢を充分拝見致しました。しかし今回は前夜祭を含めて十六日間にわたるロングランと決定、その間、村民の方々がどの様に対応されるか、中央に於ても、極めて大きな注目を寄せ、併せて実りある文化村建設をめざす村政ご当事者にとっても、村民が文化に対してどの様に平素考えているかを知る尺度としても刮目(かつもく)していた展覧会でもあったと思います。その結果は、余りにも素晴らしい成果をもたらし正に輝かしい読谷村の将来を詣るにふさわしい村民の意志反映が示されたのであります。村長、助役、教育長を中心とした文化生活を基盤とした心豊かな村造りの意志が本展に於ても積極果敢に示され、それに呼応されるかの様に各小学校、中学校は全員振替授業で特別観賞され又その折、美術観賞の仕方、マナー、絵画制作上の注意点等、私の講話を通じて学ぶ機会も持たれ、又、各校の先生方の団体や婦人グループ、老人グラブ、福祉団体、保育園等各種の村内の機関が参加され、しかも北谷、石川、沖縄、嘉手納等近隣町村からも多数の団体、個人の参観が続き、それぞれの方が心打つ現代美術の素晴らしさを胸一杯に吸収され、明日からの心の糧となる文化として利用されたのであります。延二万名に及ぶ参観者の動員記録は、村民の皆様方の芸術に対する純粋にしてひたむきな美しい心のあらわれでもありましょう。今回の振替授業の生徒達が提出したレポートを拝見致しましたがその一つ一つに、大人の私達が全く驚く程の素直さと鋭どい観賞眼をもって作品を見つめた姿勢がうかがわれ、的確な表現方法も大変立派なものでありました。さながら活き活きとした生徒達の心のはづむ音さえがきこえてくる様な内容のものばかりで、生徒達の美しい物に接した心の感動が満ちあふれており、まことにきれいな心を伝えてくれるレポートでありました。
これは又普段ややもすると見逃し勝ちな、そして把握しにくい生徒達の個性や高度な審美眼、観察力、注意深い考察力、鋭い表現力等数々の新たな人間性をも改めて教えてくれた貴重なものであり、生きた教育の如何に大切かを如実に物語ってくれたのであります。又、ファミリーで美しい絵を前にたのしそうに語り合う人達が大変に多く見受けられた事は、家族ぐるみで美術に親しみ、そこからより深い理解と友愛そして美しいものを大切にする情緒の育成を願う私の立場からも非常に喜ばしい事でありました。
私は本第二回展を記念して貴村に21世紀芸術を担う期待の洋画家増田常徳画伯と共に「陽光・残波岬の怒濤」の大作をご寄贈申しました。これは鋭意進められています文化村創造のご熱意に共感し、将来共に読谷が誇りうる芸術資産となりうる優れた作品として自信を持ってお贈り致しました。
内容は、前途洋々たる希望の展開が約束されている読谷にふさわしい画面の構成と色感の対比に留意し制制作した快心の力作であります。雲間を抜って燦々と振りそそぐ太陽の光を受けた読谷のシンボル残波の大地は、今正にそれにこたえて天に向ってそびえる毅然たる雄姿を示し、その岩礁に打ち寄せる怒濤の波はその迫りくる強烈なエネルギーの中に尚優美な色感をもたたえており力強い男性的雄豪な作品であります。
ところで心打つ美術作品とは作家の純粋な感情が充ち溢れ生命が盛り込まれています。作家の精神から湧き出た真実がやさしくあなたの心にほほ笑みかけてくれる事でしょう。優れた絵画はあなたの師であり親しい友であり心のオアシスでもありましょう。そこから喜びの人生を、希望の新風を心の中に吹きこんで参りませんか。明年又お会いの日を楽しみに致しております。どうぞお健やかに。
※絵「川島博氏・増田常徳画伯から村民へ送られた「陽光・残波岬の怒濤」F120号」は原本参照