「読谷村の福祉のためお役立て下さい」と楚辺出身の城間文さん(九四歳)はこのほど、三千万円もの寄付金を本村へ託した。
昭和五一年より恩納村にある特別養護老人ホーム谷茶の丘(長嶺栄所長)に入所している文さんは寄付の動機について「入所前までの七年間、ずっと献身的な介護を尽くしてくれた読谷村の職員のみなさんへのお礼のつもりで………」と話している。
これまでにない多額の寄付の申し出に、何度も意志の確認をとったという与那覇守丈厚生課長は、「文さんは、戦死した息子さんの遺族年金や自分の障害年金をコツコツとためた大切なお金を、惜しげもなく寄付して下さった。そのお気持ちを大切に受けとめ、本村の地域福祉振興基金に組み入れて、福祉向上に役立てたい」と感慨深げに語っていた。文さんは戦争で息子を亡くし、自身も左足を失っている。
戦後夫にも先立たれ、身寄りもないままに、不自由な身体で和裁などして暮らし向きを立てていた文さんは、高齢になるにつれ、やがて自力での生活が困難になっていった。そこで介護にあたったのが山内弘子さん、長嶺節子さんら厚生課の職員たちであった。食事、お風呂の世話、そして病院への付き添いと介護の限りを尽くしてくれた村職員の真心にふれた文さんは、人の世の情を深くかみしめたのだという。
「まくとぅ しなさき ちゅく
ちぃ うちゆ わたら」
(真の情を尽くして 生きて行こう)
文さんの好きな言葉だという。真に実感だろう。
文さんは今、谷茶の丘で手厚い介護を受け、琉歌や替え歌を詠むなど、ゆったりと快適な日々を送っている。そんな文さんの楽しみの一つに、山内さんらとの週に一度の面会がある。一人暮らしや、家庭介護を要するお年寄りのため行われている本村のデイサービスは、週二回のうち一回は谷茶の丘で実施されている。その送迎で谷茶の丘を訪れる山内さんらは、本村出身のお年寄りを激励、ふるさとの近況等を伝えている。
十二月二八日、山内徳信村長、仲宗根憲栄民生部長らは谷茶の丘を訪れ、文さんに感謝状と記念品を贈った。
「文おばあさんの崇高なお心を大切に、期待にお応えできるようお年寄りはじめ、読谷村民の福祉のため役立てます。」と山内村長が感謝のことばを述べると文さんは「こうして元気を下さったのもみなさんのおかげです。ほんとうに感謝します。」とはぎれよくあいさつ。また山内さん、長嶺さんらが声をかけると、満面の笑みを浮かべて「だんじゅ かりゆし」をうたい踊ってみせた。
本村では、一人暮らし老人や、寝たきり老人など、介護を要するお年寄りのため、「マンツーマン方式」による家庭奉仕員の派遣などきめ細かな在宅福祉がはかられている。これら福祉を支える人々の活動は、実に地味で地道な活動といえる。
このように、村総合福祉センターを活動拠点に、子どもからお年寄りまで様々な福祉活動が展開されており、城間文さんの尊い志は人と人を支えあうユイマール精神(結廻の心)として、人々の胸に脈々と受け継がれ、福祉ネットワークが益々広がって行くものと期待されている。