読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1993年9月発行 広報よみたん / 13頁

よみたんの民話 再話 枡の角

 むかし、あるところに若い娘がいました。娘は同じ村のある若い男に恋をして、いつかはその男の嫁さんになりたいと思っていました。
 しかし、病気になってしまい、その男への思いを胸に秘めたまま死んでしまいました。
 熱い思いを残して死んだ娘は成仏できず、男を後生に連れたくてしかたがなく、この世をさまよっていました。
 そこで、男はもう妻をめとって暮らしていましたが、死んだ娘はいつも男の家に幽霊になって現われました。
 そして、男の妻に
「どうか、あなたの夫をわたしに譲ってもらえないだろうか」
と言って、どこまでもしつこく追って来たそうです。
 妻が「できません」と断わると、
幽霊は、
「それでは、もしその男さえわたしに譲ってくれるのなら代わりにこの枡をあげよう。この枡はあなたの願いを何でも叶えてくれるでしょう」
「そうですか。どんな望みでも叶えられますか。後生の人にでも何でもできるのですか」
と、聞くと、
「何でもできるよ」
と答えました。
 「それでは、あなたの望みどおり夫を譲ってやるので、その枡はわたしに下さい」
と言って、枡を受け取るとすぐさま枡の角でその幽霊を打ちました。
 「おまえというやつは、死んでからも義理、恥もなく男を追ってくるのか。女に生まれていながら義理知らぬ者は、それが世の地獄というものだ。おまえなんか地獄へ行ってしまえ」
と、その枡の角で打つと、幽霊はたちまち消えてしまいました。
 そういうことから、枡の角では何であっても人を打ってはいけないということです。

※ます【升・枡】①液体・穀物の量をはかる容器。②一升ますの略。③ますではかった分量。⑭ます目。

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