読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

2005年12月発行 広報よみたん / 13頁

読谷の民俗芸能8 組踊(7) 大本部

読谷の民俗芸能8
組踊(7) 大本部

 この組踊は、字波平で上演されているが、村外の地域では「北山敵討」「本部大主」という題名で、十数カ所に伝承されています。なぜ字波平だけ「大本部」と呼んでいるかわかりません。一八○八年辰年の御冠船踊りとして上演されたようですが、作者は不明です。字波平では明治の初めのころ首里の人によって伝えられたといわれ、戦後は一九八一年、二六年振りとなる本格的な復活上演となり第七回読谷まつりに出演しています。
 あらすじは、本部大主に北山按司は亡ぼされ若按司と妹は家臣をたよりに国頭に向かうが山中で疲れ二人とも倒れる。運良く家臣である謝名、岸本とその子虎千代らに出会う。虎千代は若按司の身替わりになることを決心し、大宜味番所に火を放ち故意に捕まる。虎千代らが漢手那の浜で処刑されるところを若按司・家臣らがかけつけ、逆に本部大主を捕らえて北山に戻るという内容です。
 上演時間はおよそ二時間四十分の長編です。使用曲数は十二曲で、干瀬節、子持節、散山節の二揚曲や、伊野波節、東江節の大曲を取り入れ、歌・三線の魅力をたっぷり聞かせます。調教された犬を連れて間の者(マルヌムン)が登場し、犬を横転がり、前片足揚げなどを演じさせて笑いを誘います。この組踊も身替わりの趣向があり、虎千代と臣下の龍落としによる緊張感のある道行など時間を感じさせません。
 また、若按司からゼイを受け取った謝名大主が臣下に仇討ちの作戦を指示するいわゆる「手配り(ティクバイ)」の演出はうなるほど見事です。謝名は、「手配り」が終わるとゼイを若按司に返しますが、このことでゼイの役割の意味がよくわかります。ちなみに、ゼイを小道具とする「ゼイ踊り」も幾つかあります。
 めでたく仇討ちを終えた若按司たちは立雲節が流れるなか、「サー・サー・スリ」のかけ声とともに幕となります。
 「大本部」は長編ゆえにその上演の苦労は大変さがあると思いますが、字波平だけではなく、読谷・沖縄の無形文化財として保存継承に力を入れておられる関係各位に感謝と拍手を送りたいと思います。
  文・村立歴史民俗資料館
         長浜真勇

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