読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1959年1月発行 読谷村だより / 3頁

赤いんこ物語

赤いんこ物語
真壁 松徳

 楚辺村の屋嘉という農家に、チラーという二十才位の娘がいた。容貌端麗で村の若者達の注視の的であった。同じ村の大屋という家に蒲という若者がいたが、二人は互に愛し許し合う仲となった。
 たまたまその村の大屋のん殿内とう家の若者がチラーの美貌に惚れて自分の嫁にしたいと思っていたが、チラーと蒲が相思の仲であることを知りがっかりしたけれども、どうしても諦めることが出来ない。蒲が生きている限りチラーを自分の嫁にすることは出来ないと考えた若者は、蒲の畑からの帰りを待ち伏せて蒲を殺害してしまった。
 チラーは蒲の死後いたく落謄し、悲歓の中に日々を過していたが、自分の家の赤毛の犬が僅かにチラーの心の慰めとなっていた。その頃長い旱魃で楚辺のむら人たちは飲料水に困っていた。上川という処に天水を溜め濾過して飲料水に供していたので早魃の際には村人の困ぱいはたとえようのないほど悲惨なものであった。
 その年の夏の真盛りの日、屋嘉の赤犬が全身ずぶぬれになり家へ帰って来た
 この早魃に何処かに水がとチラーは不思議に思い、赤犬に尋ねるように身振りをすると犬は着物の裾をくわえて、チラーを誘った。赤犬にひかれる儘に従って行くと暗い洞穴にはいった。しばらくすると果してそこには水をたたえた泉があった。チラーは喜びいさんで帰り、むら人達にそのことを告げた。むら人達の喜びは非常なものでこの泉を暗川と名付け飲料水に使用した。暗川を使用するようになった。ある日のこと大屋のん殿内の若者は暗川のほとりで草を刈りていた。そのときチラーが水汲みに暗川をさしてやって来たので、それを見た若者はチラーより先に暗川に入った。
 暗川の中でチラーえの思いを遂げたいためであった。チラーは暗川の入口にさしかかったとき突然気分が悪くなり中に入ることが出来ず休んでいると、大屋のん殿内の若者の妹が同じように水を汲みにやって来た。
 妹はチラーの顔色のすぐれないのを見て早く家に帰って休んだがよいと帰宅を

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