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1976年8月発行 広報よみたん / 3頁

夏休みと少年非行 那覇地方裁判所

夏休みと少年非行 那覇地方裁判所
 家庭裁判所に送られてくる少年の非行事件の動きを見ますと、毎年夏から秋にかけて最も多くなります。しかも、その大半が、学生・生徒によって占められていることから、学生・生徒の夏休み中の余暇の過ごし方が、非行と結び付いていることがうかがえます。昭和四十九年の警察の統計によって、七月から九月までの期間中における学生・生徒の非行を行為別に見てみますと、窃盗が最も多くて、全体の約七五パーセントを占め、次いで、傷害、暴行、恐かつなど粗暴班といわれている事件が約一七パーセントとなっています。またこの時期には、強かん、わいせつなどの性犯罪、あるいは飲酒、喫煙、不純異性交遊、家出などのぐ犯(犯罪を犯すおそれのある)事件が、他の時期に比べて急激に増える傾向を示しています。
 もともと夏休みは、学生・生徒たちが学校生活から解放された自由な時間の中で、家事手伝いや家族ぐるみの旅行などを通じて、親子や兄弟との人間的な触れ合いを密にしたり、また、自主的な学習やスポーツに励んだりするなどして有効に余暇を過ごし、体の鍛練と豊かな創造性をはぐくみ人格形成の上に役立たせるというところに重点があると思います。しかし実際には夏休みによって増大する余暇を有効に利用することができないでかえって非行に陥ってしまう例が多いのです。
 学生・生徒は夏休みになると、規則正しい通学生活や学校の規律から解放されるため、自分の生活のよりどころを失ったような不安定な精神状態にあるといえましょう。少年たちがこのような状態の下で、ただ単に、解放感に浸り、浮ついた気持ちでいると、生活も不規則になり深夜まで遊び回り、思い掛けない非行に陥ったりする例も少なくありません。また、夏の開放的なふんい気も手伝って、学校や家庭から離れた刺激の多い盛り場に足を向けがちになり、不良交友関係も生じやすくなります。更に、不良仲間のふんい気にのまれ簡単なきっかけや遊び半分の気持ちでけんかや万引きを行ったり、ボンド遊びから不純異性交遊に走ったりして非行の根を深くしていく例も見受けられます。いろいろな研究から、非行に陥った学生・生徒の余暇活動について見ますと、デパートや喫茶店などにたむろし友達と談笑をして暇をつぶしたり、また、家庭にいるときはテレビを見るとか、ごろ寝をしたりして、ぶらぶら何とはなしに余暇を過ごしている例が目立っています。これらの少年について共通していることは、親が子供の余暇の過ごし方に全く無関心であったり、また関心はあっても子供の余暇の過ごし方について、適切な指導や配慮を怠っている例が多いことです。したがって、家庭では夏休み中の学生・生徒に対して、生活と行動のよりどころとしての機能を一段と強めてやる必要があります。
 そのためには、まず、休みだからといって子供に不規則な生活を許したりしないで、家庭全体が規則正しい規律ある生活を維持することが大切です。毎年、夏休みが終った九月になると学生・生徒の家出が急に増えますが、その動気について調べてみますと「遊びぐせがついて」など、夏休み中のだらしない生活の癖が新学期になっても抜けきれず、元の規則正しい通学生活にもどることができないまま、家出に走る場合が多く見受けられます。
 つぎに、子供が家庭を遠く離れて旅行などする場合、親はその計画をよく知っていることが大切です。子供たちが家庭を離れて海や山へキャンプなどに出掛ければ、解放感にまかせ、誘惑や刺激に対して抑制することを忘れがちとなり、日ごろの行動からは想像もつかないような非行に陥ることがあるからです。そのためには、子供たちが自主的に計画を立てる段階から親も参加して適切な助言を与えることが望まれます。それとともに、一緒に行動する友達の親が、お互いによく連絡を取り合うことも大切です。また、夏休み中にアルバイトをする学生・生徒をよく見掛けますが、その場合、親として、子供たちがどのようなところでどのような仕事をするのかということを、しっかりは握し、アルバイトで得た収入が浪費癖の原因とならないよう注意することも必要です。
 更に、最近は労働時間の短縮などにより、余暇を大いに楽しもうとする風潮が見受けられ、レジャー・ブームに乗じた不健全な享楽文化が発達して、いたずらにギャンブルなどにふける余暇の利用も多く見受けられます。しかし、余暇活動には気晴らしや遊び以外に、自分自身の中に、自ら新しいものをはぐくみ作り出していくための自由時間という大きな意味も含まれています。大人としても、ただレジャー・ブームの波に乗って享楽的に過ごすだけでなく、その陰で過ちに陥りやすい少年が多いことや、大人の適切でない余暇の過ごし方が、少年たちにどのような影響を与えているかを十分考え、余暇の有意義な過ごし方について、少年に模範を示していく姿勢が望まれます。  最後に、学生・生徒が犯罪の被害者とならないようにするための配慮も大切なことです。一度重大な被害を受けると、そのことがその少年の心に微妙な影を投げかけ、少年の進路を思わぬ方向に曲げてしまうことがあるからです。

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