読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

1993年8月発行 広報よみたん / 2頁

【見出し】第2回大田知事訪米要請団-その結果の報告-(副団長読谷村長山内徳信)

【はじめに】
 大田県知事を団長に第二回沖縄基地問題要請団は、五月十九日沖縄を出発、六月四日帰任した。団員には総括の高山知事公室長、仲間金武町長、山内読谷村長、儀保読谷村議会議長外県及び町村職員、NY在前国連広報部長仲地政夫氏が加わって十四名であった。これにハワイでは東恩納良吉氏が加わった。
 要請は最初に知事が沖縄の基地問題全般の説明をし、次に仲間町長から県道一〇四号越え実弾射撃演習の廃止と同用地の一部返還を求め、山内村長や儀保議長からは、読谷補助飛行場におけるパラシュート降下演習場の廃止と同用地の返還を求め真剣に訴えた。
 一九九一年の第一回要請団にも参加した者として、アメリカ側の状況の変化や印象をまとめ報告としたい。
【日本在外公館の親切な対応】
 ワシントンは深緑に萌えた好季であった。今回の訪米要請活動全体を通して、大きな変化として感じた点の一つがワシントン、ニューヨーク、ハワイ、グアムの日本大使館・公使・総領事の皆様が、要請団一行の要請活動を終始配慮し、支えて下さいました。心から感謝を申し上げる次第であります。
その背景には、訪米前に大田知事が、日本政府外務省をはじめ関係機関への訪米要請の主旨説明と協力要請をしたこともあろうが、願わくば、冷戦後の米国内の基地の閉鎖・整理縮少という状況の変化の中で、沖縄の米軍基地にも状況の変化をもたらそう、という日本政府の気持ちの一端であればと受けとめたいものである。
【変革と再生の時代に入ったアメリカ】
 変革と再生を求めて登場したクリントン大統領の最大の政治課題は、国内経済の再建である。それは彼の大統領選挙の時の国民との公約でもある。戦後半世紀間、米ソ超大国は世界覇権を目指し、軍備に膨大な国家予算を投入し、世界各地に基地を配置し軍隊をおくりこんだ。ソビエトは崩壊した。アメリカはその目的は達成したが、結果として国内経済に大きな歪みをもたらすことになった。
 クリントン新政権は国内経済再建の為に、今アメリカ国内における基地の閉鎖・再編の検討及び作業が具体的に行なわれている状況であった(要請先の話から)。
 国内の動きの後に海外基地の閉鎖・再編等の動きが具体化するもんだという印象を強く受けたものである。
 このような時期に、沖縄側から在沖米軍の軍事演習の廃止や用地の返還を求める要請活動は、正にタイミングよく時宜を得たものである。と米国各界から評価を受けたものである。
【基地沖縄への米側の理解と反応】
 今回、要請活動の一環としてアメリカ最大と言われる新聞「ワシントンポスト」紙上への一面公告「太平洋の要石から平和の要石へ」というタイトルの訴えは大きな反響があった。更に、二度にわたる
合同記者会見も大きな意義があり、マスコミを通してのアメリカ国民への訴えも功を奏したと思う。 次に米側の反応の一端を報告したい。
(一)前駐日大使マンスフィルド氏には前回も今回も大変な激励を受けた。要請団一行に自らコーヒーを注いで下さった。誠に恐縮至極であった。氏は「今は変化の時代であるということを認識すべきである。日米の確固たる関係を築くべきであり、経済問題だけでなく、沖縄の基地問題をも含めて、双方で解決していくべきである」と言われた。
(二)大統領府直轄のNSC(国家安全保障会議)のクリストフ部長(女性)に要請できたことも大きな意義があった。クリントン政権の中枢への要請であり、部長は「沖縄の基地問題については、近々話し合うことにしている。よい時期に皆さんはワシントンに来たと言える」と、理解を示された。この席で読谷村長は「クリントン大統領の就任を祝福する」という自作の散文詩を、クリントン大統領とヒラリー夫人に差し上げてほしい、と部長に手渡した。
(三)イノウエ上院議員(上院国防費小委員会委員長)は、前回大田知事の要請を受けた時言われた言葉が「すぐにこの問題に取り組む」であった。今回(六月五日)の訪沖はその具体的な実現であろう。
 イノウエ上院議員が今回の要請団に語ったことは「私は六月五日に沖縄を訪問し、基地の状況を視察する。その結果については、政府の上層部(国防長官や国務長官)に報告することになっている。これは極めて重要な視察となる」と言われた。この言葉の裏に、何か春の雪解けがはじまりはせんかと思った。
(四)ロブ上院議員(東アジア太平洋小委員会委員長)は、要請を受けてあと「沖縄の基地問題をアジア太平洋の問題の一つとしてとらえている。議会の公聴会でこの問題を取り上げることについても考えていきたい」と強い関心を示した。
(五)アバークロンビー下院議員(下院軍事委員)は「沖縄県民には大変御苦労をかけてきた。これからは米国が皆様にむくいてあげる時期がきた。軍事委員としても、沖縄の米軍基地を視察したい」と積極的な意向を表明した。
(六)国防省ベンドレィ次官補代理は要請に対し、「沖縄の米軍基地が地元で大きな問題となっていることは承知している。今後とも地元とは可能な限り基地問題解決のために協力していきたい」と語った。
(七)国防省ハバート次官補代理は要請に対し、「米軍の日本におけるコンセンサスが重要である。冷戦後、新しい夜明けを迎えた。日米合同委員会でも沖縄問題を真剣に取り上げている」「読谷飛行場の演習場の問題については、注意深く検討している」と回答。同席したシィヤー日本担当も「読谷飛行場の問題は真剣に取り上げている。防衛施設局ともディスカッションをしている。読谷村の要求と米軍の要求をどう噛み合わすかが課題である」と補足した。

※続く。

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