読谷の民俗芸能39 舞踊(20) 高平良万歳
「高平良万歳」は「万歳」とも呼ばれ、組踊「万歳敵討」で兄弟の二人が仇である高平良御鎖に近づくために踊る京太郎(チョンダラー)芸を舞踊としてまとめたものです。曲目は、口説、万歳かふす節、おほんしゃり節、さいんする節という構成になっています。
この踊りは、玉城盛重型と新垣松含型があります。まず、口説の5番の歌詞「真南風に向いて」の休憩をとる場面で盛重型は、杖を右肩にかけますが、松含型は杖を前に立ててより写実的な型にしています。次に幕内に入る入羽のときに、盛重型は両袖をとって入りますが、松含型は右手をかざしてふりながら入るという大きな違いが見られます。
読谷村では、字波平・字楚辺・字長浜・字瀬名波・字宇座・字渡慶次・宇高志保・字座喜味・字喜名・字伊良皆・字大湾・字古堅・字渡具知に伝承され、大変人気の高い踊りです。
字波平では、明治の頃から二人で踊っていました。編笠と組踊で使用される入道頭巾を被り、じゅばんの上から長帯をマヤームスビにし、ドゥーブクと読谷山花織の羽織を着け力をさします。杖(チーグーシ)の扱い方、入羽の右手を振る仕種からすると松含型の影響を感じます。編笠は最後まで被っています。編笠については、字伊良皆・字渡具知などでは、ロ説が終わるとはずしています。字波平の特徴は、出羽で立ち直りがあること、万歳かふす節の「錦の金欄」辺りで何回か飛び上がり長帯を持った両手を左右で前後に振ることなどです。字楚辺は、衣装、チーグーシの扱い方、入羽の右手をふる勝ちどきの仕種は字波平と同じです。松含型に分類される踊りの型だと考えます。
字渡具知も松含型で伝承されています。万歳口説の「兄弟しり目に」で二人顔を見合いますが、字楚辺の二番目が後向きになるところは、独特です。それから、おほんしゃり節については全体的にめりはりの効いた空手の演技でまとめられています。もともとこの踊りは空手の型を取り入れたところに見どころがありますが、字楚辺の場合は数多く散りばめられています。
平成十七年十一月号で、字長浜の組踊「万歳敵討」をご紹介しましたが、字長浜では組踊を「クンムン」舞踊を「ウドゥイ」と呼んでいます。組踊と同じく舞踊も棒とヤンザイ袋を小道具にしたといいますから組踊の場面をそっくり独立させたかも知れません。『琉球戯曲集』の記録によると兄弟の小道具のひとつとして「紅の緒房付-馬乗人形」がありますので字高志保の「馬舞」の扮装を思い描きます。各字で長帯を持って踊るのは、これらの流れを組んでいるのではないかと考えたりします。いわゆる馬の手網ではないでしょうか。
「高平良万歳」は、男踊りの最高の技量が要求されるといわれ、各字のムラアシビでもシーウドゥイとして締めくくりに踊るところが多いです。