あるアンケート調査によると、日本人の好きな虫の第一位はトンボ、逆に嫌いな虫は圧倒的にゴキブリだそうです。ゴキブリは見るからに嫌な、不快な害虫として扱われています(この扱いは、ちょっとかわいそう)。沖縄で一般にトービーラーと呼んでいるのが、大型で全身茶色、胸に輪紋がある、コワモンゴキブリ(写真)とワモンゴキブリです。これら二種とも世界の熱帯・亜熱帯地域に広く分布しています。トービーラーはサルモネラ菌などの食中毒菌や各種の病原微生物を運ぶ不潔な虫(衛生害虫)です。その死骸や糞を吸い込むとアレルギー性喘息などの原因になるようです。紙も食べるので、書籍害虫や文化財害虫という不名誉な名まえももらっています。
コワモンゴキブリは体長二十五~三十ミリメートル、ワモンゴキブリより少し小型で羽の基部に黄色の条斑があるのが特徴です。屋内のほか、住宅地周辺の林の中でもよく見られます。卵はメガネケースのような形をした卵鞘(らんしょう)の中に並んで入っており、卵の数は平均二十四個です。メスは卵鞘を、約十日間隔で二十回から三十回産むといわれています。卵鞘は本やダンボールのくぼみなどに産みつけられます。
沖縄では、木造家屋ではコワモンゴキブリが、コンクリート住宅にはワモンゴキブリが多いという調査結果があります。最近、特に市街地でよく見られるのはワモンゴキブリです。ゴキブリというと、人間の暮らしに深く関わっていると思われますが、日本に分布する五十種あまりのゴキブリのうち、屋内に住んでいるのは十種ほどで、残りの多くの種は森や草地に住んでいます。
文・写真 沖縄県農業研究センター 小浜継雄