読谷村史編集室 読谷村の出来事を調べる、読谷村広報データベース

2008年10月発行 広報よみたん / 18頁

読谷の自然(149)昆虫類 88 ~クロマダラソテツシジミ~ (シジミチョウ科)

 前ばねの長さ十四ミリメートル、はねの表はうすい紫色をしています。もともとフィリピンからインドにかけて分布するチョウですが、北方へ分布域を広げつつあります。1986年に台湾で記録され、その後定着したようです。日本では1992年に、初めて沖縄島で記録され、2006年には八重山で発生するようになり、昨年(2007年)から今年にかけて、石垣島、宮古島、沖縄島など小さな離島を含め県内の多くの島でふつうに見られるようになりました。
 ソテツにつく小さなチョウで、海岸や公園、ホテルや公共施設の庭でみられます。成虫は新芽の出たソテツに集まり、そのまわりをチラチラと飛びまわっています。またその周辺のセンダングサなどの花で吸蜜しています。幼虫は新芽や若葉を食べて育ちますが、ソテツは新芽をあまり出さない植物なので、新芽のある株は限られています。そのため多数のメスが集中して産卵してしまうと、卵からかえった幼虫は、またたくまに新芽を食べつくし、枯らしてしまいます。こうなると、その場所では幼虫は育つことができません。メスは産卵のため次々に新芽のあるソテツに移っていきます。このチョウが発生するようになってから、写真で示すように、新芽が枯れたソテツが目につくようになりました。
 沖縄県には毎年、季節風や台風に乗って、台湾やフィリピンなど南方から多くのチョウが飛来します。これらは迷チョウと呼ばれます。迷チョウの中には新しい土地で世代をくりかえし、住み着くものがいます。以前は迷チョウとして扱われていたこのチョウも今後、沖縄に住み着き、北に向かって少しずつ分布を広げていくかもしれません。
 
 文・写真 沖縄県農業研究センター 小浜継雄

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